十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「なぜ、こんなにも断られ続けるのでしょう……」

 フィーナは派手なタイプではないが、容姿は決して悪くない。若く健康で、トルメンタの屋敷でも働き者。その上、明るく素直な娘だ。結婚相手としては申し分無いはずなのに。
 実際、いつも見合いの第一印象はとても良かった。ただし、そこからひと月も経たぬうちに断られてしまう。

「相手もお前も本気ではないからだろう。中途半端な縁談は流れて当然だ」

 カミロがきっぱりと言い捨てた。
 うなだれるフィーナに、ズバズバと言葉が突き刺さる。彼に悪気が無いとはいえ、この美貌にこの口ぶり。冷たくも感じるその人となりに、彼を怖がる者も少なくない。
 つくづく遠慮の無いカミロに、フィーナは負けじと言い返した。

「私、本気です。本気で結婚したいのです」
「だが相手が本気でなければ仕方が無い。いつも相手から断られるのだろう」
「つ、次の縁談ではきっと、相手の方も本気にさせてみせます」
「どうやって? 具体的には?」
「ええ? 具体的に……?」

 カミロが、間髪入れず問い詰めてくる。しかし『具体的に』だなんてそんなもの、これまでの人生経験を総動員しても分かるはずがない。

 フィーナは、恋愛など無縁の娘だった。縁談相手を本気にさせる方法など見当もつかない。しかも相手は、ほぼ初対面の縁談相手だ。そんなゼロからのスタートで一体どうしたら……
 
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