十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「あんなキレの無いカミロ様、初めてで……みんな心配しているよ。なんかずっと城にいるし」
「そ、そうなんです。最近はあまり屋敷に戻っていらっしゃらなくて」
「おおよそ、こないだ僕が言ったことで君と拗れたせいなんだろ?」
「えっ」

 なぜこの人、こちらの事情が分かるのだろう。フィーナは何も言っていないし、カミロだって誰かに話すタイプでも無いはずだ。

「カミロ様は、君のことが大好きだから」
「な、なにを仰るのですか」
「一度話しただけで、僕には分かったよ」

 カミロはこの青年に会いに行った際、詰問した。

 フィーナより長生きする自信はあるか。一生浮気はしないと誓うか。お前は、フィーナを幸せに出来るのか。フィーナの、ただ一人の家族になる覚悟はあるのか──

「君との仲が拗れてしまったのが、僕の告げ口のせいなら本当に申し訳ないと思ったんだ。縁談を辞退したのは、君の事でカミロ様に敵うはずがないって自信を無くしたからで」

 カミロは、フィーナの孤独を知っていた。知っていたから、問い詰めずにはいられなかった。その結婚が、フィーナを幸せにするものなのか。

「だから、カミロ様に邪魔されたからって訳でも無いんだよ」────

 九人目の彼は、そう言ってカミロを庇ってから帰っていったのだった。
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