十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
 今朝のカミロは表情こそ変わらないものの、誰が見ても分かるくらいに浮かれていた。
 久々に朝遅く起きてきたと思えば、開口一番に「俺はフィーナと結婚する」とトルメンタ伯爵家の面々に向かって宣言したくらいだ。これにはフィーナもぎょっとした。もっとなにか……報告の仕方があるだろう。

「今朝のお兄様、かなりズレてたわよねぇ」
「フィーナちゃん、あんなカミロで申し訳ないけれど少しの間我慢して。遅い初恋が実って、ちょっと頭がお花畑なの」
「ちょっとかなぁ。お兄様の場合、少しの間で済むかなぁ」

 ひどい言われようである。ただし、フィーナもそう思う。

 だって昨夜は暗闇であったのをいいことに、彼からのキスがいつまで経っても終わらなかった。フィーナ自身も恋愛事に疎いため、止め時が分からぬままカミロからの愛を一身に受け続けていたのである。

「フィーナちゃん、嫌なことは嫌って言うのよ。カミロは暴走しそうだから」

 もう既に暴走しています──とはここで言えない。しかもその暴走が嫌なわけでもないことも、口が裂けても言えないのであった。
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