十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
 しかしカミロの暴走は、思いもよらない勢いで駆け抜けていた。

 カミロと和解したフィーナは、また寝る前のハーブティーを再開することにした。そして夜、彼の部屋まで訪れたのだが。

「カミロ様……なんです、これは」
 
 彼から差し出されたのは、大粒のブルーダイヤが煌めくネックレスだった。そのダイヤはカミロの瞳を思わせるような、透き通ったアイスブルー。
 
「ちょ、ちょっと待ってください。これ一体おいくらほどされたのですか」
「本当は婚約指輪を用意したかったのだが、婚約はまだ当分先だからな……これを、フィーナに」

 ただでさえ希少価値の高いブルーダイヤで、これほどまでに大きく美しい石……箱を持つフィーナの手が、カタカタと震える。

「あれ……おかしい……私達、昨日仲直りしたばかりですよね?」
「上役にも報告した。お前と結婚すると」
「早!」

 トルメンタ伯爵家で結婚宣言をしたカミロは、勤務先である城でも結婚予定であることを電撃報告したらしい。その際に大変祝福されたようで『式はいつか』『婚約指輪は』と、質問攻めに合ったという。
 婚約指輪はまだだけれど、フィーナに何か自分の色を身につけて欲しい。そう思い至ってしまったカミロは……早速ジュエリーショップへと向かったのだった。

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