十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「で、でもこんな高価なネックレス、普段使いできませんよ」
「まだあるぞ」

 カミロの視線の先──部屋の奥にあるサイドボードをよく見てみれば、小箱がいくつも積まれてあった。考えるだけでも恐ろしいが、あれは全て高級宝飾店の箱ではないだろうか。

「えっ……もしかして、あれ全部」
「ああ、フィーナに似合いそうなものばかりだ」

 フィーナはくらりと目眩がした。目の前のカミロはすこぶる満足そうで結構なのだが、どうかお願いだから落ち着いて欲しい。このままでは色んな意味でフィーナの心臓が持たない。
 幸い、用意したハーブティーは気持ちを落ち着かせる作用がある。お茶如きでは歯が立たない暴走っぷりではあるが、とりあえず今の彼には飲んでいただきたい──

「俺としては早く婚約して、婚約指輪を贈りたいのだが」
「昨日の今日ですし、そんなに焦らずとも……来月あたり、ディレット様が養子先へご挨拶に行って下さると伺いました」
「ああ、来月か……来月が遠い」

 婚約すら待ちきれないカミロは、フィーナをぎゅうぎゅうに抱きしめた。苦しい。息ができない。
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