十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
『ここのカフェに行って、先に待っていて』

 次の休日。
 フィーナは、ディレットから指定された雰囲気の良いカフェにいた。
 ディレットは相変わらずにやにやしたまま、名前を教えてくれることも無くて。仕方が無いので、フィーナは言われた通りにやって来た。
 そわそわとお茶を飲みながら、見合い相手が来るのを待っている。

 待つ間も、カフェの扉をじっと見つめ続けた。
 だって、あの入り口から未来の夫がやって来るのだ。ディレットに流れる仲人の血が騒ぐほど、フィーナにぴったりの相手が。昨日は期待しすぎて眠れなかったくらいだ。

 しばらく待つと、扉の磨りガラスに人影が動いた。

 (来た……!)

 胸がドクンと飛び跳ねる。
 フィーナは姿勢を正して扉に向き合った。
 ああ、いよいよ……未来の夫が姿を見せる。
 ギィと音を立てて扉を開いたのは────

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