私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました【コミカライズ決定】
視線をそらしていたフェリクスが、急にこちらを向いた。
透き通った綺麗な瞳。
でもどこか色気のあるその瞳に見つめられて、心臓が驚くほど大きく跳ねた。
「階段から落ちた瞬間、すぐに後悔した。……あんな言葉がアリエルに向けた最後の言葉になったことを」
あんな言葉?
それが「婚約を破棄しないか?」という言葉だったことを思い出し、胸がチクッと痛む。
「ドロテの言った通り、あれはアリエルを試そうとした言葉だった。破棄を拒否してくれないかと……小さな希望を持ってた」
「拒否してほしかったということ?」
「ああ。アランを選んだらどうしようかと、内心すごく緊張していた」
……そんなの、全然わからなかったわ。