嘘はやがて、花を咲かせる。
情報研究部
「見てくれよ、ゲーム作った」
峯本先生はプロジェクターでパソコンの画面を写して、ゲームを動かしていた。
「簡単なシューティングゲームなんだけど、当たり判定の設定とか、作っていて結構楽しかったよ」
「うわー、凄い…」
ある日の放課後。
情報研究部は勉強もせずに盛り上がっている。
「ほら誰か、やってみなよ」
「あ、じゃあやる」
星乃部長が実際にプレイすることになった。
スタートボタンを押すと、画面奥から火玉が跳んでくる。
自分のロケットに当たらないようにキーボードの十字キーで操作をして避けるようだ。
「え、火玉早くね!?」
瞬きをしている間に消え去る火玉。
当たりそう!
そう思って避け始める時にはもう遅く、ロケットに当たってゲームオーバーの文字が出た。
「鬼すぎない!?」
「星乃の反射神経が無い」
「そういう問題じゃないと思うよ!?」
キャッキャとみんなが楽しそうな情報研究部。
先生の作ったゲームで盛り上がるなんて、平和すぎる。
「紗奈、私たちもやってみよ」
「うん」
「あ。渡里と白石はゲームをプレイするだけではなく、この動きはどういう構文を書いているのかとか、そこも考えてみなよ。それが大会に繋がるから」
「えぇー無理です!!!!」
そう言いながらもゲームをしながら、使用していると思われる構文を書き出す香織。
真面目か。
「おぉ、白石は良い線行ってるねぇ」
香織が書き出した構文は3分の1が正解していた。
私も書き出したものの、全部間違い。
勉強頑張らないとなぁ…。
そう強く思った時間だった。
部活が終わり、帰り際『商高花壇』に寄った。
「もうおしまいかな…」
向日葵は枯れて茶色くなっている。
抜いて片付けなきゃ。
そんなこと考えていると、背後から声がかかった。
「………撤去だな」
「…え?」
低く小さな声。
振り返ると、長谷田先生が鞄を持って立っていた。
帰る時間が被ってしまったのか…。
「…………」
私は視線を先生から外し、歩き始める。
「あ。おい、渡里」
「……」
「……渡里。次の花、考えとけよ」
「……」
そんな先生の言葉を無視して、校門に向かって走った。
そう言えば。
思い出したことがある。
向日葵を植えようと決めたのは、現生徒会の9人だった。
年度末の3月。新生徒会メンバーとして顔合わせをした時に、何を植えるか話し合った。
会長の梁瀬先輩が、向日葵が良いと言い出し…みんなが賛同して決まった。
そして、4月中旬。
9人総出で種まきをしたんだ。
あの時は間違いなく…生徒会として機能していた。
生徒会はいつ、崩壊したのだろう…。