嘘はやがて、花を咲かせる。
向日葵
一通り水を掛け終わり、生徒会室に戻る。
部屋の中には、生徒会担当の先生が居た。
「あれ、また渡里?」
「………」
ジョウロを定位置に置いて、当番表の前に立つ。
今日の日付の箇所に書かれている先輩の名前を消して、私の名前を上書きした。
「渡里、ちょっとは反論しろよ」
「簡単にそう言いますけど……。まぁ…先輩と仲良く楽しそうに話している先生に、私の気持ちなんて分かるはずが無いですよね。反論なんて、論外です。先生には分からないでしょうけど」
「…楽しそうに、見えるか?」
「さぁ。興味無いので良くわかりませんが。先生、人気だし」
国語教師。
兼、生徒会担当の長谷田淩司先生。
高身長で甘いルックスの長谷田先生は、女子生徒からの人気が高い。
いつも生徒に囲まれている。
「渡里…お前そういう態度だから、梁瀬や由良たちに押し付けられるんだろ」
梁瀬は、生徒会長。由良は、生徒会副会長。
2人共スカートを短くし過ぎて、前かがみになると下着が見える。
先輩に対して思うのもあれだが、頭は悪そうだ。
「そういう態度ってどういう態度ですか。押し付けられる方が悪いってことですか」
「押し付けられるのが悪いんじゃなくて、お前の態度が悪いって言ってんの」
「…良く分かりません。先生は虐められている子に、お前が悪いから虐められるんだ。と言うタイプですね」
「そうじゃないだろ…」
というかこの人。
生徒会室で1人何をしていたのだろうか。
「……」
私は先生そっちのけで、パソコンの電源を入れる。
もうすぐ、生徒総会。
生徒から集めた議題案をまとめなければならない。
「…渡里。それも、お前の仕事か?」
「違います。けれど、これも誰かがやらないと、生徒総会が実施出来ませんから」
生徒が書いた議題案。
『ミニスカート作って欲しい』
『スマホを学校で使えるようにしたい』
『指定靴下ダサいから自由にして』
………。
これだから、禎原商業は偏差値が低いって言われる。
…多分、事実だけれども。
長谷田先生は何もせず、椅子に座ってこちらを見ていた。
…本当に、何でここにいるのか分からない。
「………先生、気が散ります。用が無いなら出て行って下さい」
「だから、その態度だって言ってんだろ。もう少し可愛げがあれば、梁瀬や由良たちからも好かれるだろうに」
梁瀬、由良って…。
イライラする。
「…別に、あんな人たちに好かれる必要なんて無いです」
「ん?」
「…私の気持ち。先生には分からないでしょうけどね」
やる気無くすわ。
私は議題案をまとめるのを止めた。
今日は帰ってやる。
鞄に荷物を入れ込んで、パソコンの電源を切った。
「長谷田先生、さよなら」
「え、帰んの?」
「先生が邪魔だから帰ります」
「え?」
扉を勢いよく閉めて、生徒会室を後にした。