破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます
 家庭教師のマイヤ夫人にこの国の地図を見せてもらった時に、懸命にシャミスト山を探した。
 おそらく今、鉱山開発事業者がシャミスト山の鉱石採掘事業の出資者を募っているはずだ。
 鉱山開発に投資をしたいのだと初めて打ち明けた時、マイヤ夫人はかなり驚いていた。
 ようやく文字が書けるようになったばかりの子が何を言っているのかと。
 
「あと2年で貴族学校へ入学です。文字の読み書きだけでなく、この国で盛んに行われている鉱山開発事業のことやお金のことも並行して学びたいのです!」
 わたしは強く訴えて食い下がった。
 主張に無理があるのは重々承知していたけれど、ここでシャミスト山の採掘に投資しておかないと、この山から採れる紫水晶はドラール公爵家に独占されてしまう。
 
 ドラール公爵家とは、ゲームの中でプレーヤーが動かすヒロインのひとり、カタリナ・ドラールの実家だ。
 カタリナをヒロインに選ぶと、定期的に紫水晶のアクセサリーがアイテムボックスに届くようになる。
 それはカタリナの実家が出資しているシャミスト山から採れた原石を加工したものだった。
 
 カタリナルートでゲームを進めていくと、こんなエピソードがある。
 事前調査の結果が芳しくなかったためにドラール公爵が単独で出資することとなったシャミスト山だったが、そこから紫水晶がたくさん採れた。
 結果的に鉱山を独占してウハウハ状態だと父親がカタリナに話し、定期的にアクセサリーを送ってもらえるようになる。
 だからこの山の名前を覚えていたのだ。
 ミヒャエルとは違い、ドラール公爵は先見の明があるのだろう。

「鉱山開発だなんてどこで知ったのです?」
 マイヤ夫人が怪訝そうな顔をする。
「お父様とオスカーが話しているのを聞いて興味を持ったのです」
 そう言うと、マイヤ夫人はミヒャエルにこの話を持っていった。
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