破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます
そこには3人のご令嬢が立っていた。
ハルアカを熟知しているわたしは、名前を聞かなくてもこの3人が誰だかすぐにわかった。
小柄でハニーピンクの髪のリリカ・ヴァレンシュタイン男爵令嬢。
勝気な顔立ちで銀髪のカタリナ・ドラール公爵令嬢。
背がスラっと高い亜麻色の髪のアデル・フィッシャー子爵令嬢。
3人ともこのゲームのヒロインだ。
プレーヤーはゲームを新規で始める際、まずこの3人の中から誰をヒロインにするか選択するところから始める。
選択しなかった残りの2人は、ヒロインの友人になるという設定だ。
うわあっ! ヒロインたちの実写、素敵っ!
いきなりのヒロイン勢ぞろいに怒りを忘れて見入っていると、それがまた睨みつけていると思われたらしい。
眼力の強い悪役顔が恨めしくなる。
リリカが焦った様子で口を開いた。
「ごめんなさい! 背中に蛾がとまっていたので……」
それをカタリナが澄ました顔でフォローする。
「払って差し上げた方がよろしいんじゃないかしらって、後ろで話しておりましたの」
アデルが深々と頭を下げた。
「力加減を間違えてしまったようです。申し訳ありません」
加減もなにも、払うどころかしっかり押したよね!? 突き飛ばしたわよね!?
しかも遠巻きにしているギャラリーからはしっかり嘲笑も聞こえて、なんともいたたまれなくなる。
どうしてこんなことになったんだろう。
困惑して言葉も出ないわたしのかわりにオスカーが3人に声をかけた。
「お気遣いありがとうございます。次からは、まずひとこと声をかけてもらえると助かります」
オスカーの横顔を見上げると、口角は上がっているものの目が笑っていない。
この時点では、オスカーのヒロインへの好感度はゼロだ。
今回は本当に突き飛ばされたが、ゲームでドリスが転んだ理由もオスカーは靴を踏まれたせいだと思い込んでいた。
しかし「出会いのイベント」は回避できずに発生してしまった。
ヒロインたちは3人ともオスカーを見て頬をほんのり桃色に染めている。
オスカーがヒロインの誰かと恋仲になる分にはかまわない。むしろそうなってもらいたいぐらいだ。
先日ミヒャエルからオスカーとの婚約の話を出された。
もちろん断固拒否したけれど、ミヒャエルは驚いた様子だった。
「ドリスは、オスカーのことが好きなんじゃなかったのか?」
婚約の話を出せばわたしが喜んで飛びつくと思っていたようだ。
たしかにハルアカのドリスはそうだった。でもわたしは違う。
「パパったらなに言ってるの。それは子供の頃の話でしょう? わたし、オスカーのことを異性として考えてなんていないわ」
わたしの返事にミヒャエルは複雑な顔をした。
愛娘に好きな男がいないとわかって嬉しい、しかしオスカーを後継者にしようと思っているのにどうしようか、そんな心境だったのだろう。
オスカーが伯爵家を出ていくまで、ずっと執事としてこき使ってやるんだから!
好きになんてなるものか。
だからきっぱりと断ってやった。
オスカーがハルアカのヒロインたちと出会わなかったらどうなるだろうと考えていたけれど、結果的に「出会いのイベント」が発生してしまった。
強制イベントの手ごわさをあらためて思い知ったわたしは、震える手でオスカーの腕を掴んだ。
「もう行きましょう」
オスカーがドリスを追放するまであと3年。
もっと積極的にフラグを折りに行かないといけないのかもしれない。
ハルアカを熟知しているわたしは、名前を聞かなくてもこの3人が誰だかすぐにわかった。
小柄でハニーピンクの髪のリリカ・ヴァレンシュタイン男爵令嬢。
勝気な顔立ちで銀髪のカタリナ・ドラール公爵令嬢。
背がスラっと高い亜麻色の髪のアデル・フィッシャー子爵令嬢。
3人ともこのゲームのヒロインだ。
プレーヤーはゲームを新規で始める際、まずこの3人の中から誰をヒロインにするか選択するところから始める。
選択しなかった残りの2人は、ヒロインの友人になるという設定だ。
うわあっ! ヒロインたちの実写、素敵っ!
いきなりのヒロイン勢ぞろいに怒りを忘れて見入っていると、それがまた睨みつけていると思われたらしい。
眼力の強い悪役顔が恨めしくなる。
リリカが焦った様子で口を開いた。
「ごめんなさい! 背中に蛾がとまっていたので……」
それをカタリナが澄ました顔でフォローする。
「払って差し上げた方がよろしいんじゃないかしらって、後ろで話しておりましたの」
アデルが深々と頭を下げた。
「力加減を間違えてしまったようです。申し訳ありません」
加減もなにも、払うどころかしっかり押したよね!? 突き飛ばしたわよね!?
しかも遠巻きにしているギャラリーからはしっかり嘲笑も聞こえて、なんともいたたまれなくなる。
どうしてこんなことになったんだろう。
困惑して言葉も出ないわたしのかわりにオスカーが3人に声をかけた。
「お気遣いありがとうございます。次からは、まずひとこと声をかけてもらえると助かります」
オスカーの横顔を見上げると、口角は上がっているものの目が笑っていない。
この時点では、オスカーのヒロインへの好感度はゼロだ。
今回は本当に突き飛ばされたが、ゲームでドリスが転んだ理由もオスカーは靴を踏まれたせいだと思い込んでいた。
しかし「出会いのイベント」は回避できずに発生してしまった。
ヒロインたちは3人ともオスカーを見て頬をほんのり桃色に染めている。
オスカーがヒロインの誰かと恋仲になる分にはかまわない。むしろそうなってもらいたいぐらいだ。
先日ミヒャエルからオスカーとの婚約の話を出された。
もちろん断固拒否したけれど、ミヒャエルは驚いた様子だった。
「ドリスは、オスカーのことが好きなんじゃなかったのか?」
婚約の話を出せばわたしが喜んで飛びつくと思っていたようだ。
たしかにハルアカのドリスはそうだった。でもわたしは違う。
「パパったらなに言ってるの。それは子供の頃の話でしょう? わたし、オスカーのことを異性として考えてなんていないわ」
わたしの返事にミヒャエルは複雑な顔をした。
愛娘に好きな男がいないとわかって嬉しい、しかしオスカーを後継者にしようと思っているのにどうしようか、そんな心境だったのだろう。
オスカーが伯爵家を出ていくまで、ずっと執事としてこき使ってやるんだから!
好きになんてなるものか。
だからきっぱりと断ってやった。
オスカーがハルアカのヒロインたちと出会わなかったらどうなるだろうと考えていたけれど、結果的に「出会いのイベント」が発生してしまった。
強制イベントの手ごわさをあらためて思い知ったわたしは、震える手でオスカーの腕を掴んだ。
「もう行きましょう」
オスカーがドリスを追放するまであと3年。
もっと積極的にフラグを折りに行かないといけないのかもしれない。