破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます
オスカーは、アデルとカタリナの間に座ってもらった。
ここでわたしは、ヒロインたちをうんと誉めそやした。
リリカの天然なかわいらしさ、カタリナの聡明さ、そしてアデルの勇敢さを。
もちろん、少しでもオスカーに彼女たちへの興味をひかせるためだ。
しかしオスカーは感情のこもらない整った笑みを浮かべて相槌を打つだけで、興味がないのがバレバレだ。
もっと愛想よくしなさいよっ!
楽しみにしているような態度は一体なんだったわけ?
仕方ない、ちょっと奇抜な一手を繰り出してみようではないか。
「アデルはトカゲを飼っているのよ。わたしたち、よく学校の中庭でエサのバッタを捕まえているの」
草をかき分ける仕草をしながら説明する。
「いまどきの学校では、トカゲをペットとして飼う流行が……?」
オスカーがいぶかしげに首を傾げた。
そんなわけあるか!
「ええっと……どういうわけか私のバッグの中にトカゲが入っていまして、ずっとお世話をしているんです」
わたしたちの会話を聞いていたアデルがおずおずと答えた。
「田舎育ちなものですから、トカゲに愛着がわいてしまって……」
「なるほど」
オスカーがアデルに向かって微笑む。
すると、アデルの顔がこれまで見たこともないほど真っ赤に染まった。
これはいい感じだわ。もうひと押しね!
「アデルは将来、騎士になりたいのよね? いい機会だからオスカーに話を聞くといいわ」
3人のうち誰がオスカーに見初められてもオッケーと言いつつ、ハードモードのアデルについ肩入れしてしまう。
「アデルさんは騎士を目指しているのですか?」
オスカーに真っすぐ見つめられたアデルが、はにかみながら答える。
「はい。幼い頃に父からミヒャエル様の英雄伝説を話してもらうたびに、将来私もこうなりたいと思ったんです」
アデルが緊張した声で語る様子を見て、オスカーは微笑んだ。
「最近は年々、騎士団に入団する女性も増えているのでいいと思いますよ」
ここまで聞いて思い出した。
このふたりのやり取りは、ゲームのセリフのまんまだわ!
そういえば、アデルルートではいつごろから朝の剣稽古を始めるんだったっけ……?
ふと頭に浮かんだ疑問がそのまま口に出る。
「ねえ、アデルって剣のお稽古はしているの?」
「まだ体力づくりしかしていなくて……。剣術は我流だと変な癖がつくと言いますから」
それならば、アデルに剣稽古をつけてやってほしいとオスカーに頼もうかと考えていると、横から能天気な声がした。
「アデルちゃん、せっかくだからオスカー様に教えてもらえばいいんじゃなーい?」
声の主は首をこてんと傾げてにこにこしている。
そう、リリカだ。
その背後ではカタリナが「なんて厚かましいことを!」という驚愕の表情でふわふわのハニーピンクの髪を見つめている。
カタリナはバッタ探しにオスカーが加わることにもひどく困惑している様子だった。
オスカーがアッヘンバッハ男爵の長男であることや、ミヒャエルが将来的に彼をエーレンベルク伯爵家の後継者にしたがっていることを、情報通のカタリナは知っているのだろう。
オスカーに気安く願い事などするなと言いたいのだろうけど仕方ない。リリカは天真爛漫な聖女様なのだから。
それに、これでオスカーとアデルの親密度が上がるのならわたしとしても大歓迎だ。
「そうね! ちょうどいいじゃない、教えてもらうといいわ。ね、オスカー、やってくれるでしょう?」
拒否は許さないわよと思いながら見やると、目が合ったオスカーが余裕の笑みを見せる。
「ドリスのお嬢様のご命令とあらば喜んで」
オスカーがハンナに稽古用の木剣を持ってくるよう指示した。
肝心のアデルは、急展開にどうしていいかわからない様子でオロオロしている。
アデル、チャンスよ!
しっかりオスカーのハートを掴んでちょうだい!
心の中で応援しながらアデルの背中を押した。
ここでわたしは、ヒロインたちをうんと誉めそやした。
リリカの天然なかわいらしさ、カタリナの聡明さ、そしてアデルの勇敢さを。
もちろん、少しでもオスカーに彼女たちへの興味をひかせるためだ。
しかしオスカーは感情のこもらない整った笑みを浮かべて相槌を打つだけで、興味がないのがバレバレだ。
もっと愛想よくしなさいよっ!
楽しみにしているような態度は一体なんだったわけ?
仕方ない、ちょっと奇抜な一手を繰り出してみようではないか。
「アデルはトカゲを飼っているのよ。わたしたち、よく学校の中庭でエサのバッタを捕まえているの」
草をかき分ける仕草をしながら説明する。
「いまどきの学校では、トカゲをペットとして飼う流行が……?」
オスカーがいぶかしげに首を傾げた。
そんなわけあるか!
「ええっと……どういうわけか私のバッグの中にトカゲが入っていまして、ずっとお世話をしているんです」
わたしたちの会話を聞いていたアデルがおずおずと答えた。
「田舎育ちなものですから、トカゲに愛着がわいてしまって……」
「なるほど」
オスカーがアデルに向かって微笑む。
すると、アデルの顔がこれまで見たこともないほど真っ赤に染まった。
これはいい感じだわ。もうひと押しね!
「アデルは将来、騎士になりたいのよね? いい機会だからオスカーに話を聞くといいわ」
3人のうち誰がオスカーに見初められてもオッケーと言いつつ、ハードモードのアデルについ肩入れしてしまう。
「アデルさんは騎士を目指しているのですか?」
オスカーに真っすぐ見つめられたアデルが、はにかみながら答える。
「はい。幼い頃に父からミヒャエル様の英雄伝説を話してもらうたびに、将来私もこうなりたいと思ったんです」
アデルが緊張した声で語る様子を見て、オスカーは微笑んだ。
「最近は年々、騎士団に入団する女性も増えているのでいいと思いますよ」
ここまで聞いて思い出した。
このふたりのやり取りは、ゲームのセリフのまんまだわ!
そういえば、アデルルートではいつごろから朝の剣稽古を始めるんだったっけ……?
ふと頭に浮かんだ疑問がそのまま口に出る。
「ねえ、アデルって剣のお稽古はしているの?」
「まだ体力づくりしかしていなくて……。剣術は我流だと変な癖がつくと言いますから」
それならば、アデルに剣稽古をつけてやってほしいとオスカーに頼もうかと考えていると、横から能天気な声がした。
「アデルちゃん、せっかくだからオスカー様に教えてもらえばいいんじゃなーい?」
声の主は首をこてんと傾げてにこにこしている。
そう、リリカだ。
その背後ではカタリナが「なんて厚かましいことを!」という驚愕の表情でふわふわのハニーピンクの髪を見つめている。
カタリナはバッタ探しにオスカーが加わることにもひどく困惑している様子だった。
オスカーがアッヘンバッハ男爵の長男であることや、ミヒャエルが将来的に彼をエーレンベルク伯爵家の後継者にしたがっていることを、情報通のカタリナは知っているのだろう。
オスカーに気安く願い事などするなと言いたいのだろうけど仕方ない。リリカは天真爛漫な聖女様なのだから。
それに、これでオスカーとアデルの親密度が上がるのならわたしとしても大歓迎だ。
「そうね! ちょうどいいじゃない、教えてもらうといいわ。ね、オスカー、やってくれるでしょう?」
拒否は許さないわよと思いながら見やると、目が合ったオスカーが余裕の笑みを見せる。
「ドリスのお嬢様のご命令とあらば喜んで」
オスカーがハンナに稽古用の木剣を持ってくるよう指示した。
肝心のアデルは、急展開にどうしていいかわからない様子でオロオロしている。
アデル、チャンスよ!
しっかりオスカーのハートを掴んでちょうだい!
心の中で応援しながらアデルの背中を押した。