破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます
「いったいこのような呪物をどこで手に入れたのですか」
神殿からやってきた神官にジロリと責めるような視線を向けられて、冷や汗が出る。
壊れた3つの呪いアイテムはどれも本物だった。
神官が邪悪なオーラの漂う破片を浄化し、すべて神殿へ持ち帰ってくれるという。
それはよかったのだが、生半可な気持ちで素人が呪術に手を出すような危険なことはするなとお説教されているところだ。
もちろん生半可な気持ちだったわけではないのだけれど。
「ええっと……怪しい商人から?」
「なんですかその言い訳は」
嘘じゃないわ、本当よ!
「とっても高かったんです。ぼったくられたのかと思っていたら本物だったんですね! ハハッ」
笑ってごまかそうとしても、神官はにこりともせずわたしにジト目を向けたままだ。
呪いアイテムを隠し持っていたら罪に問われるのかしら……?
だとすれば、さいはめルートを選択したハルアカのヒロインだって有罪になっちゃうわよ?
どうしようかと思っているところへ、オスカーが助け舟を出してくれた。
「ドリスお嬢様は少々破天荒なところがございまして、一点ものとか希少価値の高いものとか、そういう謳い文句に非常に弱いのです。そういった場合は金銭に糸目はつけません」
助けてくれているのかけなされているのかよくわからないけれど、乗っかることにする。
「そうよ! 贅沢こそ貴族の美徳ですもの!」
悪役令嬢っぽく、手で髪を後ろに払って優雅に微笑んでみせた。
「……まあいいでしょう」
神官が呆れた様子で苦笑する。
「今後このようなものが持ち込まれた場合には、神殿にご一報ください」
そう言って帰ろうとする神官を呼び止める。
「あの、呪い返しにあった人は今頃どうなっているのでしょうか」
すると振り返った神官は、目を細めて淡々と語った。
「強い呪いほど強く跳ね返ります。呪物を3つ壊すほどの呪いですから、相当ひどいことになっているかと」
ミヒャエルを呪い殺そうとしたのだ。報いを受けるがいい。
そう思いつつも背筋がゾクリとする。たしかに呪いは、生半可な気持ちで扱うものではない。
言葉を失ったまま神官を見送った。
伝令を聞いたアルトが駆けつけたのは、神官が帰った直後だった。
「まさかあれが本物だったなんて! ドリスちゃん、あれをどこで手に入れたの?」
「だから、怪しい商人から買ったんです!」
何度も説明しているではないか。
誰も信じてくれないけれど、本当のことだ。
「それよりもアルトお兄様、本当にありがとうございました。これできっとパパも元気になるわ」
アルトの手を握って礼を述べる。
呪いが関係しているとアルトが気付いていなければ、ミヒャエルはあのまま徐々に死の淵へと近づいていたに違いない。
「礼には及ばないよ。これで僕を伯爵家の婿養子に……ぐはっ!」
いつものようにオスカーに羽交い絞めにされるアルトの姿に笑いが漏れる。
やっと日常が戻ってきた。
これを機に、ミヒャエルは期待通りどんどん回復して元気を取り戻した。
ついに、ミヒャエルが死なないルートに入ったのかもしれない。
油断するのはまだ早いけれど、とりあえずフラグをまたひとつへし折ったのは間違いないだろう。
そしてもうひとつ。
後日、驚愕の事実が判明した。
ミヒャエルを呪っていた人物が判明したのだ。
犯人はバルノ王国の国民ではなく、とても身近な人物――オスカーの継母であるカサンドラ・アッヘンバッハだった。
神殿からやってきた神官にジロリと責めるような視線を向けられて、冷や汗が出る。
壊れた3つの呪いアイテムはどれも本物だった。
神官が邪悪なオーラの漂う破片を浄化し、すべて神殿へ持ち帰ってくれるという。
それはよかったのだが、生半可な気持ちで素人が呪術に手を出すような危険なことはするなとお説教されているところだ。
もちろん生半可な気持ちだったわけではないのだけれど。
「ええっと……怪しい商人から?」
「なんですかその言い訳は」
嘘じゃないわ、本当よ!
「とっても高かったんです。ぼったくられたのかと思っていたら本物だったんですね! ハハッ」
笑ってごまかそうとしても、神官はにこりともせずわたしにジト目を向けたままだ。
呪いアイテムを隠し持っていたら罪に問われるのかしら……?
だとすれば、さいはめルートを選択したハルアカのヒロインだって有罪になっちゃうわよ?
どうしようかと思っているところへ、オスカーが助け舟を出してくれた。
「ドリスお嬢様は少々破天荒なところがございまして、一点ものとか希少価値の高いものとか、そういう謳い文句に非常に弱いのです。そういった場合は金銭に糸目はつけません」
助けてくれているのかけなされているのかよくわからないけれど、乗っかることにする。
「そうよ! 贅沢こそ貴族の美徳ですもの!」
悪役令嬢っぽく、手で髪を後ろに払って優雅に微笑んでみせた。
「……まあいいでしょう」
神官が呆れた様子で苦笑する。
「今後このようなものが持ち込まれた場合には、神殿にご一報ください」
そう言って帰ろうとする神官を呼び止める。
「あの、呪い返しにあった人は今頃どうなっているのでしょうか」
すると振り返った神官は、目を細めて淡々と語った。
「強い呪いほど強く跳ね返ります。呪物を3つ壊すほどの呪いですから、相当ひどいことになっているかと」
ミヒャエルを呪い殺そうとしたのだ。報いを受けるがいい。
そう思いつつも背筋がゾクリとする。たしかに呪いは、生半可な気持ちで扱うものではない。
言葉を失ったまま神官を見送った。
伝令を聞いたアルトが駆けつけたのは、神官が帰った直後だった。
「まさかあれが本物だったなんて! ドリスちゃん、あれをどこで手に入れたの?」
「だから、怪しい商人から買ったんです!」
何度も説明しているではないか。
誰も信じてくれないけれど、本当のことだ。
「それよりもアルトお兄様、本当にありがとうございました。これできっとパパも元気になるわ」
アルトの手を握って礼を述べる。
呪いが関係しているとアルトが気付いていなければ、ミヒャエルはあのまま徐々に死の淵へと近づいていたに違いない。
「礼には及ばないよ。これで僕を伯爵家の婿養子に……ぐはっ!」
いつものようにオスカーに羽交い絞めにされるアルトの姿に笑いが漏れる。
やっと日常が戻ってきた。
これを機に、ミヒャエルは期待通りどんどん回復して元気を取り戻した。
ついに、ミヒャエルが死なないルートに入ったのかもしれない。
油断するのはまだ早いけれど、とりあえずフラグをまたひとつへし折ったのは間違いないだろう。
そしてもうひとつ。
後日、驚愕の事実が判明した。
ミヒャエルを呪っていた人物が判明したのだ。
犯人はバルノ王国の国民ではなく、とても身近な人物――オスカーの継母であるカサンドラ・アッヘンバッハだった。