破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます
翌日。
ローレンの証言の整合性を確認するため、ミヒャエルが騎士団へ呼ばれた。
それと入れ違いに、ドリスの親友3人が揃ってやってきた。
容態が落ち着くまで待ってもらっていたから、3人がドリスに会うのはあの日以来8日ぶりだ。
さぞや心配してくれていたことだろう。
「ドリィ。きみの親友たちが来てくれたよ」
耳元で言って髪をなでた。
3人はじっとドリスを見下ろしている。
「ずっと眠ったままなんだ。苦しそうでないのが救いかな」
「…………」
事前に説明もしていたが、ベッドに横たわって動かないドリスの様子にショックを受けているのかみんな無言のままだ。
「楽しいおしゃべりを聞かせてやってください。それにつられてドリスが目を覚ましてくれるかもしれないから」
少しおどけた感じで言ってみる。
最初に口を開いたのはリリカだった。
「ドリスちゃん! うえっ……ぐすっ……」
名前を呼んだだけでいきなり泣きだした。
「泣いてはいけませんわ! こういう時こそいつも通りに笑わないと!」
そう言っているカタリナも目にいっぱい涙をためている。
「いつも通りって、カタリナちゃんいつも笑ってないじゃーん」
「そんなことありませんわ」
目を真っ赤にしてぐずぐず鼻をすすりながらも、いつのもふたりだ。
ドリスがよくふたりの声色を真似て、今日はこんなやり取りをしていたと笑いながら聞かせてくれていた。
「手を握ってもいいでしょうか」
アデルはいつも穏やかで優しい。
「どうぞ」
騎士団の入団式を数日後に控えていて多忙に違いない。そんな中でも融通をきかせて訪問してくれた。
アデルがそっとドリスの手を取った。
「ドリスさん。わたしの騎士服姿を見てもらいたいから、早く目を覚ましてくださいね」
目を潤ませながら静かに語りかけている。
「ドリィ、本当にいい友人たちを持ったね」
再びドリスの髪をなでた。
ドリスが貴族学校に入学してしばらく経った頃に、友人を招いてお茶会を開きたいと言ったあの時。
「学生時代の友人は大事に」
と言うと、ドリスは笑って大きく頷いていた。
本当にこの3人を大事に思っていたのだろう。
ドリスの顔に少し赤みがさしたように見えるのは気のせいだろうか。
親友たちの話し声が聞こえているのかもしれない。
「あまり騒ぎすぎてドリスさんを疲れさせてはいけませんわ」
カタリナがまだ居たいとごねるリリカの腕を引っ張ってドアに向かっていく。
アデルが名残惜しそうに一度振り返ってからその後ろに続いた。
見送りながら、近いうちに孤児院の子供たちにも来てもらおうかと思案する。
ドリスはきっと、にぎやかなほうが好きだろう。
しかしここでリリカがカタリナの手を振りほどいて、ベッドに引き返した。
ドリスに覆いかぶさるように抱き着く。
「ドリスちゃん! わたしたち、ずっ友だって約束したよね。だから早く……!」
リリカがひときわ大きな声で泣いた時だった。
その体が突如、白くてやわらかい光に包まれた。
その光が膨らむように部屋中に広がり、まぶしさに目がくらむ。
次に瞼を開けた時はもう、何事もなかったように光が収まっていた。
リリカ自身も驚いた様子でぴたりと泣き止み、戸惑うように自分のてのひらを見つめている。
「聖女の光……?」
カタリナがつぶやく。
「神殿に行きますわよっ! アデルさん、リリカさんを抱えてくださらない」
「はい!」
アデルがまだ呆然としているリリカを横抱きにした。
「では失礼しますわ」
3人はバタバタ帰っていった。
聖女は聖なる光と共に現れると聞いたことがある。
だとすればドリスが目を覚ますかもしれないと期待したが、まだ眠り続けたままだ。
「少しは休んでくださいね」
ハンナに言われて、無言で頷いた。
あの日以来何度も言われているが、ドリスのそばを離れたくない。
ベッドの横のイスに腰かけた。
ローレンの証言の整合性を確認するため、ミヒャエルが騎士団へ呼ばれた。
それと入れ違いに、ドリスの親友3人が揃ってやってきた。
容態が落ち着くまで待ってもらっていたから、3人がドリスに会うのはあの日以来8日ぶりだ。
さぞや心配してくれていたことだろう。
「ドリィ。きみの親友たちが来てくれたよ」
耳元で言って髪をなでた。
3人はじっとドリスを見下ろしている。
「ずっと眠ったままなんだ。苦しそうでないのが救いかな」
「…………」
事前に説明もしていたが、ベッドに横たわって動かないドリスの様子にショックを受けているのかみんな無言のままだ。
「楽しいおしゃべりを聞かせてやってください。それにつられてドリスが目を覚ましてくれるかもしれないから」
少しおどけた感じで言ってみる。
最初に口を開いたのはリリカだった。
「ドリスちゃん! うえっ……ぐすっ……」
名前を呼んだだけでいきなり泣きだした。
「泣いてはいけませんわ! こういう時こそいつも通りに笑わないと!」
そう言っているカタリナも目にいっぱい涙をためている。
「いつも通りって、カタリナちゃんいつも笑ってないじゃーん」
「そんなことありませんわ」
目を真っ赤にしてぐずぐず鼻をすすりながらも、いつのもふたりだ。
ドリスがよくふたりの声色を真似て、今日はこんなやり取りをしていたと笑いながら聞かせてくれていた。
「手を握ってもいいでしょうか」
アデルはいつも穏やかで優しい。
「どうぞ」
騎士団の入団式を数日後に控えていて多忙に違いない。そんな中でも融通をきかせて訪問してくれた。
アデルがそっとドリスの手を取った。
「ドリスさん。わたしの騎士服姿を見てもらいたいから、早く目を覚ましてくださいね」
目を潤ませながら静かに語りかけている。
「ドリィ、本当にいい友人たちを持ったね」
再びドリスの髪をなでた。
ドリスが貴族学校に入学してしばらく経った頃に、友人を招いてお茶会を開きたいと言ったあの時。
「学生時代の友人は大事に」
と言うと、ドリスは笑って大きく頷いていた。
本当にこの3人を大事に思っていたのだろう。
ドリスの顔に少し赤みがさしたように見えるのは気のせいだろうか。
親友たちの話し声が聞こえているのかもしれない。
「あまり騒ぎすぎてドリスさんを疲れさせてはいけませんわ」
カタリナがまだ居たいとごねるリリカの腕を引っ張ってドアに向かっていく。
アデルが名残惜しそうに一度振り返ってからその後ろに続いた。
見送りながら、近いうちに孤児院の子供たちにも来てもらおうかと思案する。
ドリスはきっと、にぎやかなほうが好きだろう。
しかしここでリリカがカタリナの手を振りほどいて、ベッドに引き返した。
ドリスに覆いかぶさるように抱き着く。
「ドリスちゃん! わたしたち、ずっ友だって約束したよね。だから早く……!」
リリカがひときわ大きな声で泣いた時だった。
その体が突如、白くてやわらかい光に包まれた。
その光が膨らむように部屋中に広がり、まぶしさに目がくらむ。
次に瞼を開けた時はもう、何事もなかったように光が収まっていた。
リリカ自身も驚いた様子でぴたりと泣き止み、戸惑うように自分のてのひらを見つめている。
「聖女の光……?」
カタリナがつぶやく。
「神殿に行きますわよっ! アデルさん、リリカさんを抱えてくださらない」
「はい!」
アデルがまだ呆然としているリリカを横抱きにした。
「では失礼しますわ」
3人はバタバタ帰っていった。
聖女は聖なる光と共に現れると聞いたことがある。
だとすればドリスが目を覚ますかもしれないと期待したが、まだ眠り続けたままだ。
「少しは休んでくださいね」
ハンナに言われて、無言で頷いた。
あの日以来何度も言われているが、ドリスのそばを離れたくない。
ベッドの横のイスに腰かけた。