この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



 歩いている、今。
『心が呼吸できる世界』と現実の世界。
 二つの世界を繋ぐ出入り口の中を。


 その中を歩く時間。
 長くなっている、いつもよりも。



 私たち五人は。
 振り向いている、後ろを。
 何度も何度も。

 歩きながら。
 見つめている、惺月(しずく)さんのことを。
 そうしているから。





 遠くなっていく、『心が呼吸できる世界』。

 小さくなっていく、惺月さんの姿。















 そうしているうちに。
 来た、目の前に。
 現実の世界。


 進む、一歩前に。

 そうすれば。
 戻る、現実の世界に。

 きている、そういうところまで。












 それなのに。
 揺らいでしまう、気持ちが。



 できない、二度と会うこと。
 惺月さんと。

 それは。
 やっぱり悲しいし辛い。


 だからといって。
 帰らない、現実の世界に。
 いかない、そういうわけには。





 二つの思い。
 それらが心の中を駆け回り。
 それは次第に激しくなっていく。

 あまりの激しさに。
 本当に走っているわけではなくても。
 苦しくなっていく、呼吸をすることが。







 ある、目の前に。
 現実の世界は。

 それなのに。
 そこに踏み出す一歩。
 そのことが、こんなにも戸惑い躊躇をするなんて。










 一体どうすれば———。


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