狂愛〜虎を照らす月〜
わかってる。

わかってるけど。


もたもた言えずにいれば、岳はまたクスッと笑う。


「本当に意地っ張りだなぁ。お嬢様は」

そう言って、自分の服も脱いで行く。

クルッと後ろを向いて足元の引き出しからだして、ピリッと装着している。

ふと、岳を見る。

するとそこには、、、



虎だ、、、。

嘘、、、。


岳の背中にも虎がいた。

水墨画のような、掛け軸のような。


1匹の虎が斜め上の月に向かって歩きながら、こちらを振り向き威嚇するように口を大きく開けた虎がいた。


見慣れたカラフルなやつじゃない。


見事なグレーのグラデーションの世界観。
風景が描かれている。

そして、月だけが赤く光っていた。


綺麗だった。


どんな絵よりも。


誰の身体よりも。


私は思わず起き上がり、たまらず岳の背中へ口を付けた。

まるで吸い寄せられたかのように。


岳の肩が一瞬ピクっと上がった。


「深月。どうした?」


「岳、、、好き、、、」


私は後ろから岳に抱きついた。
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