狂愛〜虎を照らす月〜


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なんか最近、組がザワついてる。

たぶん何かあったんだろうな。
うちでもよくこの雰囲気は感じたことがある。

岳はけして何も言わないけど。

帰りも遅い。


私は、何も聞かない。
これは私の実家にいた時からのルール。

私は、帰ってきた岳を笑顔で迎える。

そうすると、少しピリッとした雰囲気がフワっと和らぐ。


「岳。おかえり!」


「ああ。ただいま」
そして、チュっとキスをくれる。


「お風呂入る?ご飯?」


「くくく。それだけか?そこは、それとも私?だろ?」
なんて冗談を言う。


「ちょっと!!」
わかっていても、突っ込んでしまうんだけど。


「ははは!風呂にしよう」


「ふふふ!行こう」


そして、岳の水墨画のような虎と月が描かれた、綺麗な背中を洗ってあげる。

岳も、私の背中を洗ってくれる。


岳はすっかり私と一緒に並んで足を伸ばして入るようになった。

一回だけって言ったのに、結局あの日から付き合ってくれる優しい人。
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