狂愛〜虎を照らす月〜



「お嬢。今日も遅くなるそうです。さっき連絡がありました。先に寝ていろと」


またか。

「わかった」


ご苦労様。岳。



そして翌朝、起きれば岳はもう出かけてしまっていた。


こんな事初めてだった。

でも確かに、シーツの感じや、シャワー室の感じを見ると、確かに帰っては来たのだろう。


でもなんだか、嫌な予感がする。


「繁。岳は?」


「若から言伝です。今日は帰れないとの事です」


はい?


「なんで?」
いつもなら聞かない事を聞く。


「お嬢。察していただけませんか?」


「、、、、、わかった。もう、いい」


何よ。


私の中で、朝の見送りは一大イベントだった。

きちんと笑顔で見送る。

この世界に身を置く以上、不測の事態もあり得るから。

いつ、最期の挨拶になるかわからないから。
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