狂愛〜虎を照らす月〜
ベッドに入る。
「おやすみ。深月。無事で良かった。本当に」
俺はギュッと深月を抱きしめる。
本当に。
こうして、抱きしめて寝れることがいかに幸せなものなのか。
今回、深月が連れ去られて、改めて深月との何気ない日常が、どれだけ貴重なものなのか思い知らされた。
歯に詰め物をさせていて良かった。
やり過ぎかとも思ったが、おかげですぐに、駆けつけることができた。
やはり常に油断は禁物なんだと。
深月に何かあったらと、想像するだけで気が狂ってしまいそうだ。
今回は不幸中の幸いでもあった。
たまたま、なまぬるい奴らが相手で、深月でも何とか太刀打ちできた。
西の雷神会とも協定を結んでいたし。
それでも、俺の敵はいつどこでまた現れるかわからない。
この世界に身を置く以上、常に警戒しなければならない。
俺はもう1人じゃない。
深月という、俺を照らす光を失うわけにはいかないから。
俺の灰色の人生を、深月は明るい光で鮮やかに彩り幸せを与えてくれる。
絶対に、守らなければ。
心の底からそう思った。