狂愛〜虎を照らす月〜
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「ふー。終わった」

会社を出れば、少し離れたところに見慣れた黒のレクサスを見つけた。

紗理奈だ。

私は駆け足でその車まで向かった。

すると、運転席から秘書みたいな風貌の男が出てくる。

紗理奈の付き人の透(とおる)さんだ。
私の付き人の繁もだけど、服を着てればその道の人間には見えない。

兄達は、やっぱりどこかオーラが出てしまっている気はするけど、それでも一見はわからない。

知らない人がみたら、イケメンのサラリーマンだ。

紗理奈と透さんは付き合っていて、実家を出て2人で暮らしている。


「深月さん。お待ちしておりました」

「ありがとうございます。透さん」

すると後部座席のウィンドウが下がって紗理奈が顔を出した。

「ほら、乗って!」

「うん!透さん、お願いします」

「どうぞ。こちらへ」

そう言って、扉を開けてくれた。
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