パパになった冷徹御曹司の溺愛は止まらない!~内緒の赤ちゃんごと、独占欲全開で娶られました~
「恭弥、いい加減にしろ、これ以上、恥をさらすならお前を社長の座から下ろす」
「好きにしろよ」

 地を這うような声が自分から出たことに驚いた。

「俺は咲良と弥生の為ならば、なにもいらない。社長の座なんて、あのふたりと比べるまでもない。勘当でもなんでもしてくれ」

 ずっと、会社を継ぐため、元樹を守るため、そんな理由をつけて生きてきた。

 でも、もう知るか。
 今の俺には、あのふたりに変わるものなどない。

「どうして! 恭弥。目を覚ましてよ。家のために私と結婚することが正しいってどうしてわからないの」

 まさか俺がこんなことを言うとは思っていなかったのか、さやかが悲痛に叫ぶ。
「さやか」
 静かに名前を呼んで、俺は彼女に頭を下げる。

「お前のことは、妹としか思えない。でも、ずっと大切だった」
 顔を上げて彼女を見ると、大きく瞳が揺れたのがわかった。

「これ以上、お前を嫌いになりたくない」
 そう伝えると、さやかは小さく息を吐いた。そして、バッグから一枚の鍵を取り出す。

「ここにいるわ」
 俺はそれを手にすると、一目散に走りだした。

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