泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた
浅田がいなくなり、幸希が車に戻った後、宮永さんと少し話した。
「いいんですか?石井を殺されたっていうのに、浅田をあのままにしておいて」
「うちだって、ポリ公なんかと揉めたくねぇんだよ。石井はどこでも揉め事を起こす奴だったから、オヤジも手を焼いてたんだ。遅かれ早かれ、奴はどっかのタイミングで誰かに殺られてたろうよ。……それに、浅田は金さえ積めば、警察内部の情報だってくれるんだ。ガサ入れが『いつ』あるとか分かったほうが、助かるだろ?利用価値のある駒だと思って、割り切ろうぜ」
組員を殺されたというのに、あっけらかんとした態度の宮永さんを見て、「なるほど」と納得した。
「つまり、カシラは石井より浅田のほうを取ったってわけですね」
宮永さんはどうやら石井殺しの落とし前をつけるよりも、浅田を手駒として利用するほうを選んだようだ。
先ほどの口ぶりから察するに、宮永さんと浅田は陰で癒着していると考えて間違いないだろう。
だから、宮永さんはこんな短時間で浅田を呼び出せたのだ。
すると、取り巻きの組員の誰かが俺に向かって「口の利き方に気を付けろ、クソガキ」と言ってきた。
それに対して、宮永さんは「いーよ、いーよ」と手を振る。
「人聞き悪いなぁ。俺だって、あんなサイコ野郎と関わりたくねぇよ」
宮永さんは「それに」と付け加えて、俺の肩に腕を回した。
「――お前があいつを撃ち殺してくれても構わなかったんだぜ?」
宮永さんはそう耳打ちをした。
どうやら宮永さんには、俺の腰のベルトに挟んでいる拳銃の存在がバレていたようだ。
「つーか、さっきの子、あの弁当屋の子だよね!?いつの間に仲良くなったんだよー!お手手繋いじゃってさー!」
宮永さんは俺の肩から腕を下ろすと、先ほどとは打って変わって、おどけたような態度で茶化してきた。
先ほど幸希と手を繋いでいたのは、彼女が浅田を警戒しているようだったので、少しでも不安を和らげようと思っただけだ。
今思うと、宮永さんをはじめとした大勢の組員に、なかなか恥ずかしい姿を見られてしまった。
「ハァ……。今回はいろいろ迷惑をかけてしまってすみません」
俺は面倒だったので、宮永さんの茶化しを無視した。
「別に構わねぇよ。血相変えたお前の顔なんて何年ぶりに見ただろうな?それに、お前が女に入れ込むなんて意外だな」
「別に入れ込んでるわけじゃないですよ」
宮永さんは「照れるなよー」とゲラゲラ笑う。
「けど、気を付けろよ。あの子がお前の女って知れたら、いろんな奴らに目をつけられるかもな。お前を死ぬほど恨んでる人間なんてゴロゴロいるわけだし。浅田だって、あの子を使ってお前を脅すかもしれない。……あの子が大事なら、完全に縁を切るか、手元で囲っておくか決めろよ」
宮永さんは軽い調子で言ってきたが、内容自体はしっかりとしたアドバイスだった。
俺も初めは、ほとぼりが冷めたら幸希とは縁を切ろうと考えていた。
しかし、彼女の気持ちを受け入れた今、そう易々と手放せるほど、俺は利口じゃない。
「いいんですか?石井を殺されたっていうのに、浅田をあのままにしておいて」
「うちだって、ポリ公なんかと揉めたくねぇんだよ。石井はどこでも揉め事を起こす奴だったから、オヤジも手を焼いてたんだ。遅かれ早かれ、奴はどっかのタイミングで誰かに殺られてたろうよ。……それに、浅田は金さえ積めば、警察内部の情報だってくれるんだ。ガサ入れが『いつ』あるとか分かったほうが、助かるだろ?利用価値のある駒だと思って、割り切ろうぜ」
組員を殺されたというのに、あっけらかんとした態度の宮永さんを見て、「なるほど」と納得した。
「つまり、カシラは石井より浅田のほうを取ったってわけですね」
宮永さんはどうやら石井殺しの落とし前をつけるよりも、浅田を手駒として利用するほうを選んだようだ。
先ほどの口ぶりから察するに、宮永さんと浅田は陰で癒着していると考えて間違いないだろう。
だから、宮永さんはこんな短時間で浅田を呼び出せたのだ。
すると、取り巻きの組員の誰かが俺に向かって「口の利き方に気を付けろ、クソガキ」と言ってきた。
それに対して、宮永さんは「いーよ、いーよ」と手を振る。
「人聞き悪いなぁ。俺だって、あんなサイコ野郎と関わりたくねぇよ」
宮永さんは「それに」と付け加えて、俺の肩に腕を回した。
「――お前があいつを撃ち殺してくれても構わなかったんだぜ?」
宮永さんはそう耳打ちをした。
どうやら宮永さんには、俺の腰のベルトに挟んでいる拳銃の存在がバレていたようだ。
「つーか、さっきの子、あの弁当屋の子だよね!?いつの間に仲良くなったんだよー!お手手繋いじゃってさー!」
宮永さんは俺の肩から腕を下ろすと、先ほどとは打って変わって、おどけたような態度で茶化してきた。
先ほど幸希と手を繋いでいたのは、彼女が浅田を警戒しているようだったので、少しでも不安を和らげようと思っただけだ。
今思うと、宮永さんをはじめとした大勢の組員に、なかなか恥ずかしい姿を見られてしまった。
「ハァ……。今回はいろいろ迷惑をかけてしまってすみません」
俺は面倒だったので、宮永さんの茶化しを無視した。
「別に構わねぇよ。血相変えたお前の顔なんて何年ぶりに見ただろうな?それに、お前が女に入れ込むなんて意外だな」
「別に入れ込んでるわけじゃないですよ」
宮永さんは「照れるなよー」とゲラゲラ笑う。
「けど、気を付けろよ。あの子がお前の女って知れたら、いろんな奴らに目をつけられるかもな。お前を死ぬほど恨んでる人間なんてゴロゴロいるわけだし。浅田だって、あの子を使ってお前を脅すかもしれない。……あの子が大事なら、完全に縁を切るか、手元で囲っておくか決めろよ」
宮永さんは軽い調子で言ってきたが、内容自体はしっかりとしたアドバイスだった。
俺も初めは、ほとぼりが冷めたら幸希とは縁を切ろうと考えていた。
しかし、彼女の気持ちを受け入れた今、そう易々と手放せるほど、俺は利口じゃない。