君に、振り向いてほしいから
「……king。瑠水と話していいですか?瑠水、混乱してるようですので」

「うん、良いよ。ありがとう、璃空さん。僕には敬語も使わなくて良いよ。璃空さんの方が年上なんだから」

kingさんは小さく微笑むと、私に手を降って羽宮先輩たちとどこかへ行ってしまった。

璃空にいは私を見ると、私がさっき居た部屋の扉を開けた。

中に入ると、雲母さんたちも続いて入ってきた。

最後に璃空にいが入って扉を閉めると、私はベッドに腰掛けた。

周りの椅子に璃空にいたちが座る。

「瑠水、久しぶりだね」

「久しぶりですね、璃空にい、翠さん、琥珀さん、雲母さん。どうして、あなた達が?」

「聞かれるといけないから、大きな声では言えないけど……」

璃空にいの声が少し小さくなる。

「瑠花に、送り込まれたんだ、スパイとして。実は、入学式の日、君はnightに取られて。それで、取り返すために、僕たちが来た」

やっぱり、私は人質として取られたんだ……。

ただ……と翠さんの口が動く。

翠さんが璃空にいの前で私に話しかけるなんて、珍しいな。

いっつも、璃空にいが目を光らせてるから……。

璃空にい、私がcosmosの総長、アクアになってからは、私たちの周りの人に厳しくなった。

「ただ、奴らの瑠水ちゃんへの扱い方が違う」

「ただの人質なら、わざわざ俺らをお前に会わせないはずだ」

「……そんなことより、瑠水ちゃん、ななほのこと、ななほって呼んでください」

ななほちゃんがころっと話題を変えた。

琥珀さんたちの表情が少し和らぐ。

ななほちゃんは、私と違って、気軽に話せる存在だから……。

ほんの、ほんの少しだけ、気分が沈む。
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