君に、振り向いてほしいから
彼はきょろきょろと左右を確認し、誰もいないことを確かめると、すぐに部屋に戻った。

「……瑠水、大丈夫だよ。俺がついてる」

さっき聞いた会話を思い出したのか、璃空にいがそっと私の手を握った。

ななほちゃんたちがいる部屋に戻る。

私たちが部屋に入ると、翠さんたちがももかちゃんたちを連れて部屋を出ていった。

しばらくして翠さんが戻ってくると、璃空にいは鍵を締め、私たちを見つめた。

「さっき、kingたちの会話を聞いてきた。……奴らは、瑠水がなにかしたら地下室に閉じ込めるつもりだ」

「地下室、ですか?」

「うん。ななほ、説明頼んだよ」

「はい。地下室は、会議室からのみ出入りできる部屋です。あまり大きくなくて、おそらく掃除もしていないでしょう。そして、地下室に誰か入れられた場合、会議室には常に幹部がいます。璃空さんたちも幹部ですが、会議室にいれるのは総長が信頼を置ける幹部だけ。私たちが会議室に入るのは難しいかと」

ななほちゃんの説明を聞くと、あたりに気まずい沈黙が落ちた。

その次の瞬間、ドアが勢いよく開いた。

入ってきたのは羽宮先輩と空橋先輩。

彼らは私の腕を掴み、冷たい目で璃空にいを見た。

後ろから、kingも入ってくる。

「……全部聞いてたぞ、珠木。さっき話してたとおり、瑠水は地下室にいれる。その予定だったよな、琥珀?」

「……はい」

「えっ?」

琥珀さんと羽宮先輩たちが繋がっていた?

もしかしたら、翠さんも?

翠さんを見ると、彼も不思議そうな、戸惑ったような表情で琥珀さんを見ていた。

「すみません、瑠水様。俺はnightからも瑠花様からも雇われたスパイです。だから……瑠花様に雇われる前は、こっそりここでcosmosやLuciferの情報を伝えるスパイとしてここにいました」

「嘘、ですよね?」

「いいえ。これは本当のことです」

琥珀さんが真っ直ぐ私を見つめた。

瑠花が、琥珀さんをスパイとして送り込んだのは知ってる。

もしかしたら、璃空にいたちがすんなりとnightに入れたのは、琥珀さんが元々nightだったからかもしれない。
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