君に、振り向いてほしいから
輝夜がいなかったら、他の家に生まれていたら。

そうすれば、こんなふうに非難されることもないのに。

もう……両親に構うのはやめよう。

満珠学園……。

ここらでも有名な、小中高一貫校だ。

僕はもう卒業したから、もうちょっとしたら入れる!

そうすれば、家族と離れられる!

受験に受かった僕は、春休みが開けるまでの間、両親を説得し、入学届けを出した。

「さよなら、ありがとう」

荷造りを終え、僕は早々に家を出ようとした。

母さんに腕を掴まれる。

「何?」

「聖夜、聖夜……。行かないで、お母さんを一人にしないで!」

その言葉に、僕の中で何かがぷつりと切れた音がした。

母さんの手を振り払い、睨みつける。

「今まで僕に文句ばっか言ってたくせに、今更行かないで?可笑しいだろ!」

母さんが目を見開く。

「せ、聖夜……」

「僕は、お前らを親と思ったことなんてない。ただの同居人だ。他人が気安く、行かないで、なんて言うな!」

ショックを受けた様子の母さんをおいて、僕は大きな音を立てて家を出ていった。

電車に乗り、満珠駅につく。

そのまま真っ直ぐ歩くと、満珠学園だ。

敷地内に入り、事前に教えられていた部屋に入る。

意外と大きい。

輝夜の部屋みたいだ。

荷解きをしようと荷物をおろしたとき、玄関の扉がノックされた。

扉の前に立っていたのは……。

「聖夜、久しぶりだね」
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