君に、振り向いてほしいから
俯き気味だった視線をあげると、そこには頼もしい笑顔があった。

僕も、中三になったら……。

叶多さんみたいに、優しさにあふれるひとになりたい。

みんなに頼りにされ、愛されるkingに。

僕の表情を見た叶多さんが、優しく微笑んだ。

「良い顔になったね、頼りにしてるよ」

僕の肩をかるく叩き、彼は部屋の戸を開けた。

僕も立ち上がり、叶多さんに続いて部屋を出る。

集会所に入ると、そこにはもうすでにnightの人たちが集まっていた。

「king!お疲れ様です!」

みんなが一斉に叶多さんに頭を下げた。

いつもどおり穏やかな笑みを浮かべながら、叶多さんはステージに向かった。

前は、最前列で話を聞いていただけだったけど、今は違う。

叶多さんのような、完璧な人になるんだ。

「みんな、お疲れ様〜。今日は、発表があって集まってもらったんだ。急でごめんね?」

顔を上げた人たちが怪訝そうに僕を見た。

「僕、転校するのでkingも辞めます。そして、二代目kingは空橋聖夜くんに決まりました〜!拍手!」

叶多さんが笑顔で拍手する。

nightの人たちは、急すぎてついていけてない。

彼もそれを察したのか、拍手をやめてみんなを見回した。

「急すぎた?ごめんね。今日から、nightのkingは聖夜くんになります!」

集会所がざわつく。
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