君に、振り向いてほしいから
誰かが、悲鳴のような声を上げた。

「僕たちのkingは、叶多さんしかいません!」

それをきっかけに、集会所の中は不満の声で溢れかえった。

やっぱり、僕なんかがkingなんて、無理だったんだ。

叶多さんをちらりと見ると、彼は見たことないくらい険しい顔をしていた。

「黙れ!」

その口から怒声が飛び出た。

一瞬で静まり返った集会所を見回し、彼は険しい表情のまま口を開いた。

「ふざけないでよ、君たち。聖夜くんがどう思うと思って言ってる?傷つくよ、そんなこと言われたら」

気まずそうにうつむいたみんなに、叶多さんが優しく微笑みかけた。

「でも、僕がいいって言ってくれてありがとうね。嬉しかったよ」

どこからか、すすり泣く声が聞こえた。

奥野優日(ゆうひ)ちゃんだ。

優日ちゃんはqueenで、僕と同い年。

叶多さんをずっと支えていた。

優日ちゃんも、queenは続けないらしい。

「優日。おいで」

叶多さんが優しく手招きした。

優日ちゃんが駆け寄ってくる。

彼は優日ちゃんを強く抱きしめると、耳もとで甘くささやいた。

「今までありがとう、優日。これからも頑張ってね」

優日ちゃんの目から、ぽろぽろと涙が溢れる。

叶多さんはそんな優日ちゃんを優しく見つめ、そっとその場を去った。

次の日、叶多さんは朝早くに旅立っていった。
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