君に、振り向いてほしいから
そんな彼女を、波は優しい目で見つめる。

瑠花ちゃんは覚悟を決めたように顔をあげ、僕たちをまっすぐ見た。

「私11ヶ月違いの妹がいるんですがその子が入院してて一緒にお見舞いに行きたいんです。……あれ?そちらの方は?」

早口でまくしあげたあと、彼女はようやく海の存在に気づいたようだった。

「俺らの友達の音島海だ。それで、俺らは見舞いに行けるぞ」

勝手に行くことを決められた僕たちは顔を見合わせ、小さくため息をついた。

……でも、瑠花ちゃんの妹ってどんな子なんだろう?

ちょっと見てみたいかも。

瑠花ちゃんは嬉しそうに微笑み、出入り口に足を向けた。

「じゃあ、行きましょうか」

体育館を出て15分後、僕たちは大きな病院の前に立っていた。

満珠病院って、こんなに大きいんだ……。

「瑠花、こんなに大きいのか?」

「はい、一般の患者さんもいらっしゃるので」

瑠花ちゃんは入ってすぐのエレベーターに乗り込み、3階のボタンを押す。

三階につくと、瑠花ちゃんは慣れた様子で310号室に向かった。

ここに、瑠花ちゃんの妹が……。

謎の緊張を感じつつ、瑠花ちゃんに続いて中に入る。

中にいた女の子が、僕たちの姿を見るなり目を丸くした。

「瑠花……?そちらの方たちは?」
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