君に、振り向いてほしいから
途端、波の目が険しくなった。

やっぱり、心当たりがあるんだ。

「違う!俺は……俺は、瑠花を、守りたいんだ」

扉が開き、瑠花ちゃんが入ってきた。

波の目が見開かれる。

瑠花ちゃんは優しく微笑み、波を見つめた。

「波先輩、私のこと、そんな風に思っていてくれたんですね。ありがとうございます。でも……椿たちをいじめるのはやめてください」

「瑠花……」

瑠花ちゃんの後ろから、悠真と拓真が入ってきた。

ふたりは申し訳なさそうに波を見た。

「ごめんなぁ、波。瑠花ちゃんが行きたそうにしてたから。警備は海と宙に任せてるし」

「ううん、お前らは悪くない。俺、総長なのに、椿たちに……悪い」

波がしょんぼりと俯いた。

そんな波に、柊くんが明るく笑いかけた。

「大丈夫ですよ、波さん。瑠花が愛されてるみたいで良かったです」

波と瑠花ちゃんの顔が赤くなる。

「柊っ!」

「ん?あ、俺またなんかやっちゃった?」

波が柊くんの真ん前にたった。

波、怒ってる?止めないと。

悠真と目を合わせ、柊くんに駆けよる準備をした。

波は僕たちの予想を裏切るように、柊くんの肩に手をおいた。

「お前面白いな、柊!」

「え?」

「あははっ、凪、悠真!波が柊に手ぇ出すわけないやんか。瑠花ちゃんがいるんやから」

僕たちの後ろで、拓真がおかしそうに笑った。
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