君に、振り向いてほしいから
部屋を出て、待合室のソファーに座る。

多分、瑠水ちゃんは今手術中かな。

大丈夫かな……。

「あ、りくにい、るかねえ」

小さな女の子の声が聞こえた。

瑠花ちゃんの表情が明るくなる。

「久しぶりだね、りみか。お父さんとお母さんも、久しぶり」

「久しぶり、瑠花。璃空も、久しぶり」

りみか?誰だろう?

瑠水ちゃんのお父さんとお母さん来たのかな?

振り返ると、五歳くらいの女の子と優しそうな男女が立っていた。

「あ、君たちが波さんと凪さんかな?」

「あ、はい。俺らのこと知ってるんですか?」

「しってるよ〜、あのね〜、るみねえ、でんわでおはなししてくれたの!あ、わたし、りみか!」

りみかちゃんがにこにこしながら教えてくれた。

可愛い。

瑠水ちゃん、僕らのこと話してくれてたんだ。

瑠水ちゃんのご両親と話していると、手術中のランプが消えた。

中から出てきた先生に、みんなの視線が集まる。

「……一命はとりとめました。術後の説明をしますので、二階堂と話した部屋に」

二階堂先生と話した部屋に戻る。

先生は椅子に座り、僕たちを見つめた。

「落ち着いて聞いてください。二階堂から聞いて頂いたように、瑠水さんは心不全です。余命は一年。もしかすると、縮まるかもしれませんが」

瑠水ちゃんのお母さんが、ショックを受けたようにうつむいた。

「瑠水さんは310号室に運ばせていただいたので、どうぞお見舞いに」

そっと立ち上がり、310号室に向かう。

波たちもついてきた。
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