君に、振り向いてほしいから
病室の扉を開けると、ベッドの上で静かに眠る瑠水ちゃんが目に入った。

点滴や色々なものに繋がれたその姿は、見ていられないぐらい痛々しかった。

あとから入ってきた瑠水ちゃんのご両親が、そっとベッドに近寄り、瑠水ちゃんの手を握った。

「瑠水……」

その日は瑠水ちゃんは目を覚まさず、部屋に帰った。

余命は一年……か。

残った時間、瑠水ちゃんに楽しんでほしい。

そのためには、僕も頑張らないと。

ご飯を食べてお風呂に入り、ベッドに入る。

瞼を閉じると、眠る瑠水ちゃんと、それを見つめる瑠花ちゃんの姿が浮かんできた。

あれこれ考えているうちに、僕は眠りについた。

次の日の朝、いつも通り波に起こされた僕は、満珠病院へ向かった。

途中で、瑠花ちゃんたちも合流する。

みんなで病室へ行き、扉を開ける。

「……おはようございます、皆さん。来てくれたんですね、ありがとうございます」

途端に聞こえた、優しい声。

まさか……。

ベッドの上では、瑠水ちゃんがこちらを向いて優しく微笑んでいた。

「瑠水っ」

瑠花ちゃんがベッドに駆け寄る。

「もう一生起きないかと思ったよぉ。ぐすっ」

瑠花ちゃんの表情は見えないけど、瑠水ちゃんは優しく微笑んだ。

「……でも、私はあと一年です」

「!」

「聞いたの?」

瑠花ちゃんが静かに訊ねる。

瑠水ちゃんは小さく頷き、そっと微笑んだ。

瑠花ちゃんは目を見開き、病室を飛び出した。
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