君に、振り向いてほしいから
ドアが控えめにノックされた。

「瑠水ちゃん、凪です。入るよ」

扉が開き、凪先輩が入ってくる。

彼はベッドの横の椅子に腰を下ろし、優しく微笑んだ。

「瑠水ちゃん、行きたいところはある?僕が連れて行ってあげるよ」

行きたいところ……。

「琵琶湖とか、行ってみたいです」

琵琶湖。テレビで見る度に、行ってみたいと思っていた。

「分かった。じゃあ、明日行こう」

明日?ずいぶん急だな。

それに、明日は学校じゃ?

窓の外を見ていた凪先輩が、ふと視線を私に向けた。

彼の優しげな瞳に、ベッドに寝ているだけの私が映る。

「僕ね、休校したんだ。瑠水ちゃんと一緒にいたいし、Luciferのこととかしないといけないから」

そっか……。

Lucferはnightに勝ったから、nightと色々話したりするのかな。

「明日、琵琶湖行けそう?」

「はい、楽しみにしてます」

凪先輩は優しく微笑み、手を降って病室を出ていった。

琵琶湖、かぁ。

瑠花は校外学習で琵琶湖に行ったみたいだけど、私は行けてない。

泳がなくて良いから、琵琶湖を見てみたい。

どんなかんじなんだろう……。

凪先輩と行けるの、普通に嬉しいかも。

ずっと読んでた小説みたいで、わくわくする。

明日を想像し、幸せな気持ちで眠りについた。
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