君に、振り向いてほしいから
その光景はとても綺麗で、思わず見とれてしまった。

凪先輩と目が合う。

「どうしたの?」

「いえ……」

目の前の琵琶湖に視線を戻す。

凪先輩は少し首を傾げると、どこかへ去っていった。

どこに行ったんだろう?

怖いな……。

私の首に、そっとネックレスがかけられた。

しずく型の透明な石がぶら下がっている。

その石は、夕日を受けてきらりと輝いた。

綺麗……。

凪先輩は優しく微笑み、私の顔を覗き込んだ。

「似合ってるよ、瑠水ちゃん。僕からのプレゼント」

「ありがとう、ございます」

凪先輩の顔が近づいてくる。

反射的に目を閉じた次の瞬間、唇に甘いキスが落ちてきた。

ゆっくりと唇が離れる。

「凪、先輩……?」

「好きだよ、瑠水。世界の誰よりも」

うそ……。

凪先輩が、私のことを好きになってくれた?しかも、呼び捨てで呼んでくれてる!

本当のことをいうと、私も凪先輩が好き。だけど……。

「私も、です……。けど、私は、もうすぐっ」

死ぬので、と続けようとしたとき、凪先輩が私の口を優しく塞いだ。

「駄目だよ、そんなこと思っちゃ。……瑠水、僕と、付き合ってくれる?」

「私で、いいのなら……」

凪先輩の顔がぱあっと明るくなった。

幸い、私たちがキスをする瞬間は見られていなかった。

もう夕方だし、人が少なかったのもあるかもしれないけど。

「瑠水、僕に先輩はつけなくていいからね」

「でも……!」
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