君に、振り向いてほしいから
「でも、は無し」

凪先輩は優しく微笑むと、そっと私の背後に回った。

私の車椅子の向きが変わり、バスに乗せられた。

どこに向かってるんだろう?

バスに揺られて一時間ぐらいした頃、凪先輩はバスを降りた。

着いた先は、今日leansがライブを行うホール。

どうして、ここに?

「凪さん?」

「ちょっと待っててね」

受付の方へ走っていった彼は、受付の人と少し喋って戻ってきた。

「入るよ」

中に入ると、凪先輩が押す車椅子は、迷わず会場へと入った。

「瑠水、来たかったんでしょ?チケットあたったから、サプライズで連れてきたんだけど……」

嫌だった?不安そうな目をして凪先輩が私の顔を覗き込んだ。

可愛い……。

思わず笑みがこぼれる。

凪先輩は安心したように微笑み、ステージを見た。

もうすぐかな……?

十分後、ステージから人が出てきた。

leansかな?

スポットライトに照らされた宙さんたち。

彼らは私に気づくと、優しく微笑んでくれた。

「みんな〜、こんにちは〜!leansです」

客席が盛り上がる。

leansは満足げに微笑み、歌を歌い出した。

二時間ぐらいのライブはあっというまに終わった。

アンコールの曲も終わり、退場のアナウンスが流れる。

凪先輩は出口には向かわず、裏口のようなところから楽屋に入った。
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