君に、振り向いてほしいから
私がしたいこと……。

「琵琶湖に、行きたいです」

最後に行く場所は、琵琶湖がいい。

最後に見る景色は、あの日見た琵琶湖がいい。

凪さんは優しく頷き、部屋を出ていった。

しばらくして戻ってきた彼は、すぐに壊れそうな笑顔をしていた。

「外出許可もらってきたよ。今すぐ行こう」

言った途端、凪さんは私の荷物をまとめて私を車椅子に座らせた。

でも、座ってばっかりは嫌だ。

車椅子からそっと腰を浮かす。

その途端、凪さんが驚いたように目を瞠った。

「立てるの……?」

「えへ……。凪さんと歩きたくて、頑張りました」

凪さんは嬉しそうに微笑み、私の手を取って病院の外に出た。

凪さんについて電車に乗り、琵琶湖へ向かう。

あの日と同じように、夕日で照らされた琵琶湖を見たあと、夜ご飯を食べて病院に帰った。

「楽しかったです、ありがとうございました」

凪さんと分かれ、私は眠りについた。

……2日後の午後3時、私の心臓は静かに動きを止めようとしていた。

駆けつけてくれたみんなの顔を見回す。

night、cosmos、Luciferのみんな。

りみかやももかちゃんたち、お父さんとお母さん。

瑠花、璃空にい、波先輩、海さん。

一人一人の顔を見回す。

私の横では、泣きそうな表情をした凪さんが私の手を握っていた。

「……大好き、だよ、凪」

私の言葉を聞いた途端、彼の目から涙が溢れた。

「みんな、今、まで、ありがとう……」

最後に凪さんに微笑み、私はそっと目を閉じた。

< 82 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop