センチメートル
「なあ、紗央」
「ん?」
「お前がいつも一緒にいる、林田さん。あの子彼氏いんの?」
どくん、と心臓がはねた。
さっきのとは違う。
一気に血の気がひいていく感じがした。
「いないよ…。なんで?」
「いや…なんとなく」
なんとなくって、なに?
こうやって、私から心の情報を聞き出していくの?
ねえ慎吾。
それって残酷すぎるよ。
別れればすむ。
だけど別れた方が、きっと私は苦しくなる。
「広瀬くん」
「ん?」
「広瀬くんは…彼女いないの?」
「いねえけど、好きな奴はいるらしい」
「へえ…。」
話をそらすために咄嗟に出した話題。
広瀬くん、彼女いないんだ。意外だな…。
「広瀬くんなら、きっとOKしてもらえるのに。告白しないんだね」
「ああ…なんか、叶わないからとか言ってたな。あいつ変なところであきらめ癖あるからな」
「慎吾、協力してあげなよ」
「まあ、考えとくか」
そういってカフェオレを飲む慎吾。
外は春の暖かそうな日差しがきらきらとさしている。
私の気持ちはこんなにも冷えてしまっているのに。
なんだか春が憎らしくなった。
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