センチメートル


タイムをはかった後、部長が声をかけてきた。



「皆川さん、大丈夫なの?」


「え?」


「昨日、広瀬くんが

皆川さんは体調不良で休むそうです。

って言ってたから。でも、もう元気そうね!よかったわ。」



うそ、広瀬くん、そんなことしてくれてたの?
優しすぎるよ…。本当、広瀬くんを好きになればよかったなぁ。

私の初恋は、広瀬くん。
走っている姿にきゅんとなった。だけど、慎吾なんかに出会ってしまったのだ。
ああもう、いまごろ広瀬くんを好きになるなんて、できないよ。慎吾なんかより何倍もいい人なのに。

でもそれをカバーするぐらい、あの笑顔は優しかったんだ。


慎吾のことを考えると腹が立ってきた。



「ああもう!」



慎吾への苛立ちのおかげでタイムが上がった。私の実力って、一体…。




_
< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop