ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
後日談エピソード

1.大地くん。君は、何を考えているんだね?

佐木家の食卓で、三人がそろって夕食を()るなんて、滅多にあることではなかった。
にもかかわらず、食事中、父さんは無言だった。

私が()れた食後のお茶をひと口すすったあと、父さんは話を切りだした。

「───確かに、未婚の男女が同じ家で暮らしていて、何も起きない方が不思議だろうな。しかし……」

難しい顔のまま、大地を一瞥(いちべつ)する。

「大地くん。君は、何を考えているんだね?」
「ちょっ……父さん!?」

てっきり、未成年で高校生の大地に《手を出した》私を、責めるのかと思っていたのに。

手にしていた汚れた食器を、流し台に投げるように置いた。
テーブルに戻って、父さんに反論する。

「大地は悪くないわよ!? 責めるなら、私の方にして───」
「朝、僕が言ったことは、僕の本心です。
今思うと、少し軽い言い方で、お父さんがご心配なさるのも、無理はないかと思いますが」

私の言葉に覆いかぶせるように、強い口調で大地が言う。

「僕は、本当に……まいさんが好きなんです。
言葉では言い足りないくらい、大事な人で、大切に想っています。
その気持ちは、生涯変わることはないって、今ここで誓えます。
ただ僕は学生ですし、将来に関して何の保証もないので、すぐに信じてもらうのは難しいのかもしれませんが───」
「そこだよ、大地くん」

いきなり大地が「好き」だの「大切」だのと、父さんを前に睦言のような恥ずかしい言葉を口にしだしたので、隣で聞いていた私は、意識を別次元に飛ばしていた。

けれども父さんには、大地の《ハズカシ発言》は、まるで聞こえなかったのか指を上げて大地の言葉をさえぎった。
< 100 / 115 >

この作品をシェア

pagetop