ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「お腹すいてるなら、ご飯すぐに食べに行こうか? それとも、本を少しのぞいてからにする?
まいさんに借りたマンガの続き、出てたから買っておいたよ。まいさんが、先に読んでいいからね?」

大地の屈託ない透明で明るい声は、本屋のように静かな場所では、よく響く。はしゃぐ姿も、どこか子供っぽかった。

……昨夜のベッドの上の人物とは、別人に思えてしまうくらいに。

「ちょっと待って、まいさん」

複合型映画館を含む、レストラン街と呼ばれる飲食店が並ぶ一帯へ向かう途中、いきなり大地に二の腕を引かれた。

女子中高生が好きそうな雑貨と、安価なアクセサリーを置いている、ファンシーショップの前だった。

「これ。このピアス。まいさんに、似合いそう」

大地が手に取ったピアスは、十字架を型どったものの中心に、ピンクのジルコニアがはまっている、シルバーピアスだった。

……可愛いかも。

「すぐに戻ってくるから、待っててね」

黙っている私に言い残すと、大地は店の奥に入って行った。手の内に収まるくらいの小さな紙袋を手にして、戻ってくる。

───買ったんかい!

「…………何、ムダ遣いしてんのよ?」

低価格(ねだん)のわりに美味(うま)い、イタリアン系のファミレス。
平日夜の店内は、隣を気にせずに話すことができる程度に、埋まっていた。

「───やっと口きいてくれた」

パタンとメニューを閉じて、大地は嬉しそうに笑った。真向かいの席から立ち上がると、私の隣へと腰を下ろす。
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