ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
昨夜のアレは、夢か幻だったに違いないと、卑怯な現実逃避を試みようとした私は、自身の過ちの深さを、問題を引き起こした張本人に、突きつけられてしまったのだ。八つ当たり気分で、口を開く。
「……仕事とプライベートは、別よ」
「うん。僕は『特別』ってコトだよね」
「は?」
「───はい、できた。
ほら、見て。やっぱり、よく似合うよ」
店内の壁面にある鏡の方へ、私の肩を抱き、向けさせる。ニコニコ顔の大地と、仏頂面の私の顔があった。
自分のそんな表情を見せられ、気まずい思いで視線を外す。
大地がポツリと言った。
「……冗談だよ。まいさんが、僕の……なんて…………こと、解ってるから」
「え? 何? よく聞こえない」
か細く出された声は、店内のざわめきにまぎれてしまい、思わず訊き返す。
大地は答えずに立ち上がると、私と真向かいに座り直した。いたずらっぽく笑って、メニューを広げて見せてくる。
「注文、決まってる? 早くしないと、上映時間に間に合わなくなっちゃうよ?」
*****
映画館を出ると、23時を軽く過ぎていた。
私の車が置いてある従業員の駐車場は、映画館の位置からだと歩いて2、3分の距離にあった。
「───こんな所、通るの?
物騒じゃない? 女性が一人で歩くには」
大地が眉を寄せたのは、片側二車線の国道の下を通るトンネル内に入った時だった。
トンネルなので、電灯がついていても薄暗いし、当然ながら見通しも悪い。
トンネルを抜けたところに暴漢がひそんでいたら……なんてことも、あり得なくない。
「……仕事とプライベートは、別よ」
「うん。僕は『特別』ってコトだよね」
「は?」
「───はい、できた。
ほら、見て。やっぱり、よく似合うよ」
店内の壁面にある鏡の方へ、私の肩を抱き、向けさせる。ニコニコ顔の大地と、仏頂面の私の顔があった。
自分のそんな表情を見せられ、気まずい思いで視線を外す。
大地がポツリと言った。
「……冗談だよ。まいさんが、僕の……なんて…………こと、解ってるから」
「え? 何? よく聞こえない」
か細く出された声は、店内のざわめきにまぎれてしまい、思わず訊き返す。
大地は答えずに立ち上がると、私と真向かいに座り直した。いたずらっぽく笑って、メニューを広げて見せてくる。
「注文、決まってる? 早くしないと、上映時間に間に合わなくなっちゃうよ?」
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映画館を出ると、23時を軽く過ぎていた。
私の車が置いてある従業員の駐車場は、映画館の位置からだと歩いて2、3分の距離にあった。
「───こんな所、通るの?
物騒じゃない? 女性が一人で歩くには」
大地が眉を寄せたのは、片側二車線の国道の下を通るトンネル内に入った時だった。
トンネルなので、電灯がついていても薄暗いし、当然ながら見通しも悪い。
トンネルを抜けたところに暴漢がひそんでいたら……なんてことも、あり得なくない。