ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「こうやって、まいさんと新婚ごっこができなくなるのが残念だなって、コト」
「───いきなり何すんのよ、バカッ!」

音を立てて首筋にキスされ、驚きと怒りのあまり、まわされた腕を乱暴に振り払った。

反動で、持っていた菜箸が鍋の取っ手に引っ掛かり、油の入った鍋が、ひっくり返る───!

「わっ……!」
「───っと、と!」

寸前で、大地の片手が鍋の取っ手をつかみ、事なきを得る。
……や、まだ、鍋だって熱いはず……。

「え。ちょっ……まいさん?」

急いで大地の手を引き寄せ、蛇口をひねる。勢いよく流れ出す水に、大地の指をさらしてやった。
……良かった。赤くなってるけど、たいしたことなさそう。

「痛い?」
「ううん、全然。少しじんじんするけど」
「……痛いんじゃない、バカ」
「まぁでも、まいさんに中身がかからなくて、良かった」

良いわけあるかっ。元を正せば、あんたが妙なコトしたからじゃん!
……と、思ったものの、口には出せなかった。
結果的には、大地のおかげでヤケドせずに済んだわけだし。

しばらく流水にさらしたあと、大地の手に小さな保冷剤を握らせておき、薬箱を持ってきた。
冷たくなった大地の指先に軟膏(なんこう)を塗ろうとすると、パッと手を引っこめられた。

「ちょっと、何? 別に、しみたりしないと思うわよ?」
「うん、分かってる。けど、その前に、()めて?」
「は?」
「だから……舐めて、僕の指」

目の前に突き出された指に、脱力してしまった。
……こいつ、一体なんなの?

< 28 / 115 >

この作品をシェア

pagetop