ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「それでな、舞美。
父さん、明日から一週間、関西支店に出張なんだ。いきなりで悪いが、大地くんの面倒みてもらえるよな?」
「……え? ええっ!? 何ソレッ!? まさか彼、ここに住むってワケじゃ……」

言いかけて、目の端に映った、ボストンバックとデパートの紙袋。二人が持ってきた荷物だけれども。

ひょっとして……これは彼が、我が家に引っ越してくることを表しているのっ!?

「ちょっと待ってよ……。いくらなんでも唐突すぎるでしょ、父さんっ……!」

あまりのことに、何をどこから突っ込んで良いのやら解らない。

父さんは、私をなだめるように両手を上げた。

「お前の言いたいことは解るが、彼にはもう、身寄りがないんだ。頼れるのは、父さんだけなんだよ。
頼む! 半分は血が繋がっているんだ。姉弟仲良くしてくれ……な?」

拝むポーズのまま、チラリとこちらを見た眼鏡の奥の父さんの眼が、情けないくらい必死で。

私は、渋々うなずくより仕方がなかった。

「よろしくお願いします」

だめ押しするかのように、にっこりと、彼はふたたび人懐っこく笑ってみせた。

*****

「ありがとうございます。また、お越しくださいませ」

微笑んで言って、頭を下げる。
私の接客が終わるのを待っていたらしく、すかさず声がかかった。

「舞さん。営業の仲村さんから、お電話です」

販売員を兼ねた製造の多香(たか)ちゃんこと森下(もりした)多香子(たかこ)から、受話器を受け取る。

「お待たせしました、佐木です。
……あぁ、どら焼フェアーのことですね。
あれ、オーナーが、あんまり乗り気じゃないようで……」
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