ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
そんな大地に、惹かれている自分に、気づいてしまった。

最初のキスやその直後の行為は、確かに情欲に流されていたんだと思う。だけど……さっきのベランダでのキスは───。

ふいに大地が指を上げ、私の頬に触れた。

……いま、この時が、大地を拒む唯一のチャンスかもしれない。たとえそれが、見え透いた嘘だとしても。
嫌いだから触るなと言えば、大地はきっと、二度と私に触れなくなるだろう。

感覚的なものでしかないけど……大地は、私が嫌がることは『本当にしない』気がした。
そして、私は……大地が『そういう奴』だと解っているのに───言えなかった。

……言いたく、なかった。

真っすぐに私を見て、思いつめたようにかすれた声で、大地は言った。

「僕は、まいさんが好きなんだ。初めて会った時から、ずっと。
まいさんは覚えてないだろうけど、小学生の頃から何度か、まいさんのお店に、僕は行っていたんだよ? シュークリームや、ケーキを買いに。
いつも親切にしてくれて、優しく笑いかけてくれて。……あの人から、まいさんが半分だけ血の繋がったお姉さんだって聞いてからも……ずっと、好きだった」

私は人の顔をきちんと覚える方ではなかった。だから、大地にそんなことを言われても、ピンとこなかった。

例えば、いつも同じ時間に来店されるお客様や、同じ物を注文されるお客様というのは覚える気がなくとも、自然と記憶に残ることはあったけど。

< 39 / 115 >

この作品をシェア

pagetop