ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
勤務先の洋菓子店は、自宅から車で二十分程度の場所にある、ショッピングセンター内にあった。

店頭で焼き上げたシュー皮に、お客様から注文を受けた後にカスタードクリームを注入する、焼きたてシュークリームが売りの店だ。

「それより、サマーデザートの件で、一度、話がしたいそうです。
……えぇ、売れ行きがいまひとつで……」

シュークリームの他に、メインの洋生ケーキはもちろんのこと、常温保存できる焼き菓子中心のギフト商品も取り扱っている。

夏本番前の今は、水ようかんやフルーツゼリーといったサマーデザートが、御中元ギフトの目玉だ。

ピンポーン、と、軽やかな音が鳴り響いた。
電話の向こうに来客を告げ、シュークリーム売り場に足を向ける。
多香ちゃんは、ケーキ売り場で接客中だったからだ。

ケーキ・シュークリーム・ギフト商品と、店は三方にショッピングセンター内の通路に面していた。
よって、三方面で、対面接客をするようになっている。

呼び出しボタンが設置してあるのは、ケーキ売り場とシュークリーム売り場との間に薄い壁と収納棚があって、反対側の見通しがきかないからだ。
そのため、通常の販売員の立ち位置は、両方の売り場が把握できるギフトコーナー側となる。

「すみません。急ぎのホールの注文が入ったのでしばらく販売のお手伝い、できません」
「はい。了解しました」

会計待ち中に、多香ちゃんから声がかかり、笑ってうなずく。
マスクをかけながら、多香ちゃんは製造室に戻って行った。

製造室は、店舗の二分の一を占めている。
一部がガラス張りとなっていて、シュークリームのクリーム注入と同様にケーキの製造過程も、通りすがりのお客様にデモンストレーションする形をとっていた。
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