ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
どんなお客様にしろ、丁寧に接するのも笑顔を向けるのも、仕事としてやっていた。
そこに『心』がないかといえば、そうではなく、よほど非常識な言動をされない限りは、誠心誠意を尽くすように心がけている。
プロとしてお金を頂戴している以上、当然の接客態度だと思うからだ。

「それがまいさんの仕事だって、今ならちゃんと、解ってる。
でも、少ない小遣いで買った、一個だけのシュークリームでも……まいさんの優しい笑顔を思いだして食べると、一人の夜でも寂しくなかった。
僕には、まいさんっていう素敵なお姉さんがいる、一人ぼっちなんかじゃないんだって、そう、思えたから」

小さく笑ってみせる。せつなくなるほどの優しい眼差しに、胸がつまった。

こらえきれずに、私の頬に触れた大地の指を、つかんだ。
わずかに震えが伝わってきた指を、そのまま自分の頬に押さえこみ、私は目を閉じた。

何がいけなくて、何が悪いんだろう?
私も、今、目の前にいる大地に、愛しさが募っている。
抱きしめて、抱きしめられたい。

いつの間に……こんなに───。

ゆっくりと目を開けて、大地を自らの瞳に映して、微笑んだ。

「私も……大地が好き」
「まい、さん……?」

びっくりしたように、大地が見返してくる。

なんで驚くの?
私が、好きでもない奴と、寝るとでも思ってるの?

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