ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
立ち上がっても、大地はなごり惜しそうに、私の手をつかんだままで。ゆっくりと指をほどいて、ようやく手を離してくれた。

二人分の飲み物を持ってきて、ふたたび腰を下ろす。

「はい」
「……けち」
「何がよ、バカ」

二人で一本ならともかく、一人一本のどこがケチか、と、内心どつく。

大地は差し出した缶を受け取らずに、私の手首を握った。引き寄せられて、大地の腕に包まれた。
深く息を吸いこんで、吐く。その息遣いに、大地を振りあおいだ。

「どうしたの?」

私の疑問に、いつものように大地は、ふふっと笑って答えた。

贅沢(ぜいたく)な溜息、だよ───こんな風に」

私の身体を抱きしめて、もう一度、深呼吸する。

「好きな人を自分の腕の中に抱いて、その匂いを記憶しているんだ」
「記憶、ねぇ……?」
「───明日……もう今日か。お父さんが帰ってきたら、当分は、こうやって二人で過ごすのも、難しそうだしね。一人寝も、寂しくないように」
「そっか」

複雑な思いで、うなずく。
大地じゃないけど、父さん、また出張に行ってくれないかな、と、考えてしまった。
我ながら、あらゆる意味で親不孝だな……。

「あ、でも、前に言ったことは、有効だから。気にしないで、呼んで?」
「前に……何?」
「アイスキャンディ」

意味ありげにウィンクされて、全身が朱に染まる思いがした。
もう、ヤダ……早く忘れて欲しいのに……!!

「それ、ホント見なかったことにしてよ……。恥ずかしくて、死にそうになるから……」
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