ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
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帰りの車中、冷やかしまじりに大地に言ってやった。

「今日あんたの『ファン』に、あんたと付き合うの、やめた方がいいって言われたよー?」

噂の真偽はともかく、彼女らが大地に好意を寄せているのは、なんとなく解っていた。
忠告するという行為は、牽制(けんせい)的なものを感じるからだ。

「え?」
「ママ活してるって、噂らしいよ?
なぁに? 寄ってくる同世代の子に、きつくあたったりでもしたの? そんな変な噂、流されるくらい」

脇道に入ろうとしている前の車の右折待ちになったので、ちらりと助手席の大地を見やった。

大地はこわばった顔で私を見返していた。ふいっ……と、視線をそらす。

「……ちょっと。噂じゃなくて、事実だったりするの?」

予想外の反応に、苦笑する。

私にとっては事実であろうがなかろうが、どちらでもいいことだった。

ところが大地は私のからかいに何も返さず、固い表情のままフロントガラスの向こうを見据えていた。

思わず、大地をのぞきこむ。

「大地? どうしたの──」

クラクションが鳴らされた。あわてて前方に向き直り、ブレーキペダルからアクセルペダルへと右足を踏みかえた。

大地は黙ったままで……あまりにも意外すぎる大地の沈黙に、落ち着かない気分で車を走らせた。

……もう、どうしたっていうのよ……?

*****

家に帰ると、父さんはコンビニで買ってきたらしい弁当を広げていた。私達の姿を見て、ちょっと笑う。

「早かったな。レイトショー観てくるんじゃなかったのか?」
「え? あぁ、……食事だけにしたんだよね、大地?」
「……うん」

小さく大地がうなずく。

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