ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「ひとっ風呂浴びたら、大地にいろいろ訊いてみるよ、私」

ダイニングテーブルから伸びをしながら離れる私を見て、父さんが苦笑した。

「舞美。さっきのは訂正だ。大地くんは、お前と違って繊細そうで、うかつに対応できないからだと思うんだ」

ぴくぴくと頬がひきつった───ガサツで悪かったわねっ。


*****


コン、コン。
……これで10回目のノックだ。

トレイにのせたグラスの中で、氷がカランと音を立てた。このままじゃ、二人分の薄いオレンジジュースが、できあがってしまう。

「大地ー? 何ヘソ曲げてんのー? つーか、入っちゃうからねー?」

いいかげん遠慮がちにノックするのにも嫌気がさして、部屋の主に声をかけてみる。
一応、一拍だけ間をおいて、中へと入った。

「───……ねぇ、僕が一人エッチとかしてたら、どうするの?」
「見物してやるわよ」

ふん、と、鼻を鳴らしてやる。

大地は、こちら向きにベッドの上で膝を抱えていた。私の答えに、ふふっと笑う。
……なんだ、つまらない冗談、言えるんじゃん。ホッとした……。

力ない笑い方は、確かにいつもと違うけど。
でも、口がきけるようになったなら、さっきよりマシだよね。

驚くほど少ない大地の部屋の家具のうち、中央にある丸テーブルにトレイを置いた。

本棚と勉強机以外は、ゲーム機もテレビもパソコンもない、およそ若者離れした部屋だ。
代わりに、本棚に収まりきれなかったらしいハードカバーの分厚い本が、無造作に平積みされている。
本以外の娯楽品は、本棚の上に載ったチェス盤とその一式くらいしか、見当たらない。
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