ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「はい、どうぞ」

大地にオレンジジュースを手渡し、ベッドの側に腰を下ろした。

「───僕さ……ママ活なんて、してないよ」

受け取ったグラスについた水滴を、大地は片方の親指でなぞっている。

私は自分のグラスに手を伸ばし、オレンジジュースをひとくちすすった。

「ふーん。……で?」
「信じてないの?」

冷めた口調で問えば、苦笑いが返ってきた。私は、わざとらしく溜息をついてみせる。

「……あのねぇ、私は、あんたが自分の独特なルールの中で生きているのは、イヤってほど、思いしらされているんだからね?
信じるも信じないも、大地がしてないって言うなら、そうなんでしょ? 違う?」

……と、ヤバイ。これじゃ、さっきと同じ展開だ。
あわてて、詰問口調を反省する。

「そうじゃなくて……道徳とか倫理に束縛されないあんたが、『ママ活してない』だなんて、つまんない嘘、つくわけないと思うし。
だから……そんな大地が、一体何にこだわっているのか、私には、それが気になっているのよ。
ちゃんと、聞かせてよ」
「うん……そうだよね」

大地は言ったきり、また黙ってしまった。
思いだしたようにストローをくわえ、オレンジジュースを飲む。

歯切れの悪い大地なんて、初めてだ。何を、ためらっているの───?

額にグラスを押しあて、大地は瞳を閉じた。何かを思うように。

「この耳の、ピアス。高校に、入った時に、開けられ、たんだ」

ようやく口を開いた大地は、一語一語句切って、のどの奥からしぼりだすようにそう言った。
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