ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「……開けられた?」

受け身な言い方だ。……誰に?

「あの人───僕の、母親に」

私の疑問に、大地は抑揚なく答えた。
半ば伏せられた瞳は、憂うつな何かを思うように、生気がない。

「小さい頃……って言っても、小学校の低学年くらい、かな?
僕も周りのことが、ある程度は見えてきた頃で。同級生によくからかわれたよ、『お前、シセイジなんだってな』って。

私生児って、ちゃんと意味をもった言い方じゃなくて、彼らも僕も、それが差別用語だって、感覚的に解っていて……僕は、ただ、哀しかった。
でも、あの人に、それは言えないし、言ってはいけないことだって、思ってた。

『いい子でいなさいね? わたしに、恥をかかせないで』
それが、あの人の口癖だった。

僕は、あの人のいうとおり、良い子でいようと努力した。
少なくとも、そうである限り、あの人が僕を見捨てるわけがないって、漠然と感じていたから。

でもね」

(せき)をきったように淡々と語り続けていた大地が、そこで息をついた。目を細めて、宙を見据える。

「僕が、テストで良い点を取ってもスポーツで成績を残しても、先生や周りの大人に褒められても。
『あら、そう』って、それだけの反応でしかなくて。あの人にとって、そういうものは、できて当たり前だったんだ。

何ができたら、何をしてあげたら、喜んでもらえるだろうって。いつも、考えてた。

高学年になって、料理を覚えて、毎日疲れて帰ってくるあの人のために食事を用意して……。
そうしたら、『ありがとう、いい子ね』って、言ってくれるかとも思ったけど……駄目だった」
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